新宿でしか手に入らない「ヴァイナル文學選書」
第1弾「新宿歌舞伎町篇」刊行

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複数の作家が、一つの街をテーマに書く掌編小説シリーズ「ヴァイナル文學選書」(東京キララ社)が始動し、2018年10月に第1弾として「新宿歌舞伎町篇」が刊行された。

発起人はライター、詩人などとして活動する石丸元章さん。ラインアップは石丸さんによる「聖パウラ」、小説家・ライター、海猫沢めろんさんの「鬼畜系ゲームブック熊猫」、ヒップホップMCとして活動する漢a.k.a. GAMIさんの「北新宿2055」、音楽家・文筆家の菊地成孔さんによる「あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて」の4冊。

石丸元章さん「聖パウラ」

テーマと同様、作品の流通も「一つの街」に限定し通販などを行わないのが特徴。同シリーズは新宿区内にある「紀伊国屋書店新宿本店」「ブックユニオン新宿店」「BERG」「鎖カフェ」「3rdroom」「模索舎」の6店と、作品の朗読会が開催される会場のみで販売する。価格は各1,000円(税別)。

海猫沢めろんさんの「鬼畜系ゲームブック熊猫」

東京キララ社代表の中村保夫さんは、歌舞伎町を選んだきっかけについて「この新たな試みの第1弾にふさわしい『街』を決める最初の企画会議で、制作スタッフ全員が何の迷いもなく『新宿』を選んだ」と振り返る。

「新宿歌舞伎町は、世代や性別、職業、国籍にかかわらず全ての人を受け入れる寛容な『街』であるから、人それぞれ思い入れも強い。読者にとって感情移入しやすいという思いもあったし、今どき読者にわざわざ書店まで足を運んでもらう上での交通の便も最高だと思った」とも。

漢a.k.a. GAMIさん「北新宿2055」

形状も従来のとじられた本と違い、とじないままのバラ刷りをヴァイナル(ビニール)によって密封した。中村さんは「読者からの反響は予想以上に多く、皆さん熱く語ってくれている。『新宿まで買いに行くところからすでにストーリーは始まっていて、封を開ける時にドキドキした』といった感想が最も多かった。買った帰りに、そのまま新宿のお気に入りの店でコーヒーやビールを飲みながら読んだという人も多かった」と話す。

菊地成孔さん「あたしを溺れさせて。そして溺れ死ぬあたしを見ていて」

 「『買いたいが新宿まで行けない』という地方の方などの声もよく聞いたが、東京の知人に頼んで買ってもらっているという話もよく耳にした。苦情というのは一件もなく、手に入れるまでの苦労も楽しみの一つだと思ってくれているのではないか」と中村さん。

刊行に関連して「紀伊國屋書店新宿本店」では、石丸さんと菊地さんを迎えての朗読会とトークショー(2018年12月)や、 漢a.k.a. GAMIさんを迎え、石丸さんとカメラマンの永山さんが漢さんの「北新宿2055」を全文朗読するイベント(2019年2月)のほか、新宿「LUMINE EST」地下1階のビア&カフェ「BERG(ベルク)」で展覧会(2019年1月)も行われた。

中村さんは「朗読会は超満員で熱気にあふれていた。すでに買って読んで下さっているお客さまも、著者自らによる朗読にうっとりと聞き入っていた。かなり満足度の高いぜいたくな時間だったと喜んでいただけた」と話す。

展示は「販売店の一つであるBERGに本を置いてもらう時に、本を売るだけでなく何か発信できないかと相談したことがきっかけ」だったと言い、同シリーズのデザインを手掛ける井上則人デザイン事務所の井上則人さんが展示デザインを担当。同じく同書の写真を撮影する永山達弥さんによるモノクロの風景写真も合わせて展示した。

「当シリーズはビニールの中に入っていて売り場で中を見ることができないので、ビジュアルで世界感を伝えたり、導入部分の数ページを読んだりして興味を持ってもらえたらと思った。カウンター席の前の壁の展示を、ビールやコーヒーと一緒にゆっくり楽しんでいただけたのでは」と話す。

 関連リンク 
「東京キララ社オフィシャルサイト」 http://tokyokirara.com/information/1958/