TABLAO FLAMENCO GARLOCHÍ
(タブラオ フラメンコ ガルロチ)
株式会社バモス 代表取締役 村松尚之さん
インタビュー

2019.02.26

これまで日本でも、幾度となくブームになるなど人気のフラメンコ。
その音楽や歌、そして踊りに魅せられた人々の間では、知らない人はいないというまさにフラメンコの聖地が、新宿駅に程近い「伊勢丹会館」6階にある。

「TABLAO FLAMENCO GARLOCHÍ(タブラオ フラメンコ ガルロチ)」は2016年、この場所に約50年の歴史を紡いだ「エル・フラメンコ」を受け継いで生まれた、本場のフラメンコアーティストたちによるショーと料理が楽しめる空間である。
日本のみならず、世界的にも類を見ないという同店を手掛ける株式会社バモスの村松尚之社長にお話を伺った。

長いこと多くのフラメンコファンに愛されてきた「エル・フラメンコ」を引き継がれたのはどういうきっかけだったのですか?

「エル・フラメンコ」は、かつて銀座のソニービルにあった「銀座マキシム・ド・パリ」(2015年閉店)などを手掛けられた方が造られた店でした。高度成長期にあって、当時は西洋への憧れも大きかったのではないでしょうか。パリのレストランやドイツのパブなどを日本で展開する中で、フラメンコのショーを見せるこの場所も誕生したと聞いています。伊勢丹会館の中ではもっとも古いテナントです。

ここは毎日スペイン人のフラメンコのショーが見られる唯一の空間なんですが、それと同時に土曜、日曜はフラメンコの愛好者の発表の場でもあります。

我々は、もともとフランメコの衣装を手掛けていて、現在も赤坂に「ソニア・ジョーンズ」という店を経営しております。本国ではお祭りの際に着られるものですが、私たちの衣装は発表の場に伴って需要があるものですから、前オーナーから継承のお声がけいただいた時は、なんとか「発表の場」を存続させたい、そんな思いがありました。

ショーの運営はスペインに馴染みがないとなかなか難しいところですが、うちはスペインとは20年近く一緒に仕事をしてきて、現地にも社員のようなスタッフもおりましたので、飲食業の経験はなかったのですが、この場を新たに再生していけるのではと決心しました。

伝統を引き継ぎつつ、新生「ガルロチ」としてどのようなことに取り組まれたのでしょうか?

昔は空間装飾も過剰に付け加えるような時代だったと思うのですが、ゴテゴテしたものは削ぎ落とし、現代の感性に合わせ内装は少しミニマリズムと言いますかシンプルにしました。その中で椅子や一部のデコレーションなどあえて当時の面影を残している部分もあります。

舞台も全部作り変えました。まず下の階への防音対策を徹底したのですが、元の床に防音材を入れたらアーティストの方から「この床じゃ踊れない」と言われ苦労の連続でした。営業時間は削れない中、地元静岡の知り合いの援護もあり無事工事を終えました。

出演されるアーティストは世界中で活動される一流の方ばかりですね。

舞台公演として企画されている場所はありますが、こういう空間は、本当に世界中見渡してもあんまりないんです。タブラオの名店はスペインでも、マドリッドのコラル・デ・ラ・モレリアやバルセロナのコルドベス、セビリアのロス・ガジョスくらいだと思います。
ホセ&トロンボ団ホセ&トロンボ団
フラメンコは家族伝承のような部分もあってファミリーで踊るという伝統があるのですが、なかなかファミリーが一緒に踊るのを見る機会が無い中、昨年(2018年)は、35年ぶりに一家が揃って登場した「ファミリア・フェルナンデス」の特別招聘ステージもありました。劇場でしか踊らないというトップアーティストは「この場所に恋した」と、2週間ショーのために来日してくださいました。常に本物の迫力あるステージを皆さんにお届けできたらと思っています。
ファミリア・フェルナンデスファミリア・フェルナンデス
不思議なものですけどフラメンコ練習生や一般の方々が、この空間を見た時にビビっときて知らぬうちに涙を流しているんですよね。それくらいハートにくるような場所なのではないかなと私は思うのです。ここに来てプロになろうと決心する方もこれまでにも多くいらっしゃいました。

フラメンコファンのお客さまが多いでしょうか?

客単価は8000~9000円くらいですが、20代のカップルやファミリー層も多くいらっしゃいます。北は北海道から南は沖縄までフラメンコファンはもちろん演劇ファンの方、一番多いのは40代~60代くらいの女性のグループ、男性のグループでしょうか。

「エル・フラメンコ」時代は、あまり料理はしっかり出していなくて、とにかくショーを見せる場でありました。当店は、料理もショーもゆっくり楽しんでもらえたらと、一部、二部完全入れ替え制だったところを通しに変更しています。

長くいても心地よい空間を作れるかなと考えたのと、踊りを生で見ながら食事ができるというのは、私には非常に贅沢なことだと感じたんですね。

昔から通ってくださっている60代から80代の方、そして一流企業の社長さんはじめ、接待のご利用も多いですね。ショーのコンテンツが良いので、フラメンコを見るためだけに成田から直行するような方もいらっしゃるほどです。

最上級コース エルシッド最上級コース エルシッド

スペイン本国より熱中しているのではとも取れる、日本人が惹かれるフラメンコの魅力はどんなところだと思われますか?

その答えがこの空間に隠されているのでは、と思っています。足を運んでくださった方に、見て感じていただくほかはないのですが。
一般の人も涙します。この場所でフラメンコに開眼し、一生フラメンコに捧げている人たちもいます。人生を変えてくれるような場所になっているかもしれません。

フラメンコというのは諸説ありますが、踊りや音楽の能力に長けていた流浪の民が、人生における悲哀だったり喜びであったりを、自分たちのソサイエティーの中で踊って表現する、それが文化的に根付いていったようです。日本の演歌にもどこか似て、男性にも女性にも日本人の心に響くのではないでしょうか。

オープンして2年、今後の抱負をお聞かせください。

東京には、「オオバコ」と言われるような150人、200人入れる場所が減ってきているそうなんですね。だからこういう場所を残していかないと、という思いもあります。

私自身、スペインに行って何度もこうしたタブラオを見ていますが、どこも非常に流行っているとは言え、ほとんどが一見さん、観光客ばかりです。当店は、毎年アンダルシアに通っているという人や、1年住んでいたといったような、多い時には半分くらいが熱心なフラメンコファンの方々で、それはもうものすごく目が肥えているんですね。そういう人たちの前で踊るというのは、ある種名誉でもあり、ある種戦いの場でもある。だから自ずといいショーが出来上がると思うのです。

村松尚之さん村松尚之さん
「エル・フラメンコ」時代の残すべきところはしっかり残していきつつ、アーティストのクオリティを落とさず、「ガルロチ」にしかできないことを続けていきたい。そのために料理もサービスもショーも一流であり続けたいと思っています。フラメンコの愛好者はもちろん、そうでない人にもフラメンコの魅力、良さを伝えていく、気づかせる場所でありたいな、と思っています。

店名の「ガルロチ」は、ジプシー語で「心」を意味するという。
サービスであれ、料理であれ、ショーであれ「心に届けられたら」という村松社長の思い。この先、新たな伝統を刻んでゆくこの空間にぜひ一度足を運んでみては。
写真:近藤佳奈 (村松さんのポートレートを除く)
TABLAO FLAMENCO GARLOCHÍ
東京都新宿区新宿3-15-17 伊勢丹会館6F
TEL 03-5361-6125

 関連リンク  
「TABLAO FLAMENCO GARLOCHÍ」 http://garlochi.net

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