「新宿グランドターミナル」を目指した一体的な再編
新宿駅東西自由通路の工事進む

2020.02.13

東京都と新宿区は2018(平成30)年3月、新宿駅、駅前広場、駅ビルなどを一体的に再編整備し、「新宿グランドターミナル」とするべく、「新宿の拠点再整備方針〜新宿グランドターミナルの一体的な再編」(以下「再整備方針」)を策定した。

新宿駅周辺は、1885(明治18)年に日本鉄道(現 JR東日本)新宿駅が開業し、これをきっかけに電鉄線路で仕分けられた東西エリアというイメージになった。東エリアは店舗や百貨店、劇場などが建ち並ぶ商業繁華街として発展を続ける。西エリアは都市インフラである淀橋浄水場の建設、またその後の閉鎖を経て新宿に丸の内、大手町、霞ヶ関が担っている首都機能を分節しようという構想として生まれた「新宿副都心」を構成する建造物、東京都庁舎、ビジネス高層ビルが建設された。現在に至るまで東エリアが商業圏として発展し続けてきた姿とはまた違う、ビジネスマンの行き交うエリアとして発展してきた。近年では開発の遅れていた南エリアに、商業+ビジネス複合ビルである新宿サザンテラス、バスタ新宿などが建設され、新宿は東西南と市街地が拡大し、地区ごとに特色ある街として発展してきている。

駅のみに視点をおいて見ても、都心と郊外を結ぶ結節点、ターミナルとして発展してきた新宿駅は、日本鉄道新宿駅に続いて私鉄小田急線、京王線、西武新宿線の各新宿駅が開業、また地下鉄線の新宿駅も次々と開業し、路線は地下化、立体化するなど重層的に広がってきた。現在は7路線8つの駅が結節し、一日の乗降客数約380万人は世界でも1位、2位にランクインすると言われている。しかしこの複雑な結節はスムーズとは言い難く、目的地まで到達しづらいだけでなく、危険時回避行動にも課題を持つようになってきていた。

「新宿グランドターミナル」の一体的な再編は、新宿駅周辺の建物が築50年以上を迎え、駅や駅ビルの老朽化が進んだこともあり、更新期を迎えた駅ビルの建て替えを契機として、国際交流都市の玄関口としてふさわしい整備を行うものである。足掛かりの一つにもなるのが現在進められている「東西自由通路整備計画」である。2012(平成24)年9月にJR東日本が工事に着手した計画で、現在の西口と東口改札をそれぞれ移設し、両改札を結んでいた改札内の北通路部分が、改札外の自由通路となる。通路幅もこれまでの約17メートルから25メートルに広がり、エレベーターが改札内に4基新設される。

東西自由通路のイメージ(資料提供:東日本旅客鉄道株式会社)東西自由通路のイメージ(資料提供:東日本旅客鉄道株式会社)

区の担当者は「7月の東京2020オリンピック・パラリンピック開催時までに開通する予定。オリンピックをきっかけに海外からの来街者なども増加が見込まれる中、同通路の完成で新宿駅の利便性や東西周辺地域の回遊性もかなり向上するのではと期待している。開通を一つの契機として、今後の新宿グランドターミナルの再編に向け、街の特性やまちづくりの動向を踏まえた、さらなるまちづくりの推進力となれば」と話す。

現況と整備後の新宿駅構内(資料提供:東日本旅客鉄道株式会社)現況と整備後の新宿駅構内(資料提供:東日本旅客鉄道株式会社)

「再整備方針」ではグランドターミナルと街を「東西骨格軸」でつなぎ、人中心の街に変える構想を掲げる。新宿駅の線路上空に東西エリアをつなぐデッキを新設する予定もあり、地下の「東西自由通路」と合わせて、歩行者が駅と街、街と街の間を移動しやすく、かつ滞留出来る空間を確保するというものとなっている。駅前にはグランドターミナルの顔となるプラザやテラスを整備するほか、地域全体として街のレガシーを継承しながら新たな景観を生み出し、国際交流拠点として持続的な発展を目指す。

全体の完成はおおよそ2040年代を予定する。

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