新宿駅東西に広がる観光スポットや商業施設、ホテル、オフィスなどへスムーズに移動することができる手段の一つに、新宿駅西口を起点に運行している循環型のバス「新宿WEバス」がある。
新宿区が2006(平成18)年からバス導入のための協議を重ね、その後プロポーザル方式(複数の事業者から企画提案を募り選定する)で選ばれた京王バス東株式会社(府中市)が運行事業者となり、2009(平成21)年9月に運行がスタートした。
今夏には新宿駅構内に「東西自由通路」も完成するが、新宿では常々、歩行者がよりスムーズに東西エリアを回遊できるような駅周辺整備が課題となっていた。新宿区みどり土木部交通対策課にお話を伺うと、「歩行者が移動するための空間不足や、駅周りの渋滞改善などに向けて、何か新しい発想ができないかなというところから、循環型バスを走らせてみてはどうだろうかと考えたのが始まりでした。当時、東京メトロ副都心線の開業を控え、併せて都営地下鉄大江戸線の乗降客数が伸びていたこともあり、将来的な変化を見通した際、新宿駅周辺に今後ますます溜まってしまうだろう人の流れを、どのように街にスムーズに流せるかということが一つ大きな背景としてありました」と振り返る。
バスの愛称は「新宿の西口(West)と東口(East)を結ぶバス」、そして「わたしたち(We)のバス」などから「新宿WEバス」と名付けられ、東西を循環しながら結びつけるイメージでデザインされたロゴは、天窓がついた特別仕様のバス車両にあしらわれた。運賃は100円で、一日乗車券(300円)などもある。
現在の運行ルートは3つで、一つは新宿西口から東側の歌舞伎町を周り、再び西参道(ワシントンホテルやパークハイアット東京方面)を運行する「歌舞伎町・西新宿循環ルート」。「新宿御苑ルート」は南口のバスタ新宿と東側の新宿御苑、新宿三丁目、歌舞伎町エリアと新宿西口を結ぶもの。「朝夜ルート」はその名の通り、ビジネスマンの足としての利用が多い西側(ワシントンホテル、西参道方面)を、朝と夜の間だけ循環するルートである。
現在のルートに至るまでには、さまざまなトライ&エラーを重ねてきたという。「最初に考えたのは、西参道から都庁北側一体の西側と、新宿御苑、靖国通りを結ぶ8の字のようなルートで、歌舞伎町は通っていなかったのですが当初の利用者は約10万人と、想定していた数をだいぶ下回っていました。ニーズと運行ルートが違うのではないかという率直な反省の下、利用状況によってその都度バス停、ルートを見直し利便性を高めていきました」
ルート変更には街そのものの開発も多分に影響する。「例えば西側は、自前のシャトルバスやリムジンのあるホテルもありましたので、それらの運行がないエリアやビジネスマンの足として利用の高いルートに絞りました。『歌舞伎町ルネッサンス』を掲げ、誰もが安心して楽しめるまちづくりを目指していた歌舞伎町エリアは、交通網の弱さが声として上がっていました。南口に『バスタ新宿』が新たに誕生し、歌舞伎町にもインバウンドの利用が多いホテルなどが増加傾向にありましたから、羽田から直行でバスタに着くお客さまがスムーズに歌舞伎町に移動できるよう、また宿泊者がお帰りの際に新宿駅やバスタにダイレクトに行けるよう、地元の方にも相談しながら、現在のような歌舞伎町を通るルートも出来上がったのです」と担当者。現在では3ルート合わせて年間約55万人が利用するまでになった。
「夏の土日には新宿中央公園のジャブジャブ池に遊びに行く親子連れが利用される姿も多く見かけます。区民はもちろん、新宿に遊びに来られる日本人の方々にも、まだまだ数は少ないけれどシティバス的に利用いただけたらと思います。観光客の方には、街なかで迷うことなく駅や目的施設に移動できるので、街の風景も楽しみつつ新宿に親しんでいただけたら嬉しいです。東西自由通路と合わせ、今後区も事業者も、より周知方法や利便性を高めるなど継続して運行していけたら」と期待を込める。
関連リンク
新宿WEバス
https://www.keio-bus.com/ensen-info/webus.html