「アート」の力で世界に新たなる道を作り、育てる
現代アート集団「Chim↑Pom」 <後編>

2019.09.03

「Chim↑Pom」は2016年、取り壊しが決まっていた旧歌舞伎町振興組合ビルで、大規模な新作個展に音楽、パフォーマンス、トーク、ライブイベントなどからなる「また明日も観(み)てくれるかな?」を開催した。これは、「『2020年の東京オリンピックまでに』をスローガンに再開発が進む東京の都市の姿を(「Chim↑Pom」が捉え)描くプロジェクト」の始まりだった。その中の一つ、4階・3階・2階とフロアを切り抜き、そのまま真下の1階に積み重ねた巨大彫刻作品「ビルバーガー」では、壊す・建築するという、相反する2つのプロセスによって「Scrap and Build」を可視化して見せた。

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

展示終了後に撤去せず、ビルの建て壊しと共に破壊されたそれら作品群は、その後拾い集められ、高円寺で開催したプロジェクト第2弾で再構築する。ここで彼らは「道が拓ける」と題し、近隣の公道、私道から誰でも24時間利用することができる文字通りの道「Chim↑Pom通り」を開通させた。

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

台湾で開催されたアートビエンナーレでも、国立の美術館を会場に「公共性」や「自由」を問う「道」を制作されていますね。「道」を作る意図、作って見えてきたことはどんなことでしたか?

今の人たちは、僕らがあえてこういったことをやらなければいけないくらい、公共と個の違い、「個」に鈍感になっている気がしています。道を作って「誰でも使えます、ルールなんてありません」と掲げたところで、誰も当事者として、僕らが思ってもみなかったような凄い使い方で使わないんです。公共を個人が切り拓くことに慣れていないというか、そうしたものに対して「与えてくれているものだ」と思ってしまい、当事者になれない。だから「道を作る」だけではなくて「道を育てる」ために、作ってからもいろいろな刺激やきっかけを付与していく必要があると思ったんです。

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

2018年10月に歌舞伎町で行った「にんげんレストラン」(主に身体表現やアンプラグドなどの人間の存在を強く意識させるパフォーマンス、ワンナイトイベントなどを織り交ぜた会期限定のレストランプロジェクト)では、コンセプトは僕らが作ったけれど、キュレーションは曖昧にして、参加アーティストにやりたいことを出してもらいながら、こちらもいろいろと投げかけました。そうすると若いパフォーマーや作家たちがどんどん自分で考えて、自分なり空間や時間を使うようになって、さらには彼らがキュレーションをし始めるようになったんです。つまり「容れ物」を使う「当事者」がその内容を自ら変えていった。公と個の関係の話です。

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

実験の段階では失敗もないわけだから、どんなアイディアも全部許容していくようにした。その結果、僕らが意図していたり想像していたりしたものよりも、はるかに演じる人数も、内容も膨れ上がっていきました。一回チャレンジしてみるともっと違うことができると思うから、次の日は違うアプローチをしてみたり、ゲリラでやり始めたり。このプロジェクトは、展覧会のようにいつ行ってもいいようなものではなくて、その時その時に何か出来事が起こるような、まるで生き物みたいなイベントになりました。

誰もが「当事者」であるような、「身体性」を意識させられる展示でしたね。

息や心臓の音を可視化したり、身体を使ったりするパフォーマンスが多かったというのもありますが、まるで建物自体が息をして、生きているような感じになったんですよね。
実際にアーティストや観客たちの息の音を録音したものを使った三野新という若い演劇人の作品もあって、イベントの最終日には彼らみんなが集まる中、会場に流していたその「息の音」を立ち切るというパフォーマンスもありました。イベント終了後に会場となった建物が壊されることも決まっていたので、これはもう、建物の最期、いわば「危篤状態」を看取り、みんなでラストの瞬間を共有しているようでした。建物がどう最期を迎えるか、それは逆に言えば、壊され新たに作られる中で、街がどう生きるのか、道がどう生きるのか、同じように例えられたのではないかと思います。

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

新宿も大規模な再開発が進んでいます。未来の街に期待されることは何でしょうか?

日本はモノが溢れていて、必要十分に足りている上でさらに何を新しく創れるか、ということなので、そこにこそ「アート」が必要だと思うのです。
僕は東京が地元なので、街の風景が変わっていくことに慣れているし、寂しいという気持ちもありません。でも、街に何か新しく大きいビルなどが建つと、そのビル側の人間が望む、望まないに関わらず、街の人たちがそれを中心だと思い込んでしまうことに繋がりますよね。「中心」が出来てしまうと、街のカオスや多様性といった有機的な環境は「周辺」になりがちになる。そこから発信されている考え方が街の考え方だと思い込むようになったりすることが起きると思うんです。
モニュメントがなかった新宿、特に歌舞伎町はそれぞれバラバラに成立していたけれど、再開発が進んで新しい建物ができ、それが中心的な役割を担ったとしても、それが川上で周りが川下みたいな一方通行な変わり方にはなってほしくないなと思っています。新しいその中心部と、今まで街にあった姿が面白い形にミックスされ、状況によってどちらが川上でどちらが川下かが行ったり来たりする。そんな新しい有機性を作り出すことによって、今までのように「当事者たちが当事者たちで居続けられる」、そんな街であって欲しいと思います。

道や街は、過去から現代まで、その時々の姿が積み重なり、その上に今日の姿を提示している。
高円寺でも、「Chim↑Pom通り」制作のために埋め立てたものを地層のように常設展示されているが、「Chim↑Pom」はこれまで6人でどんな地層を積み重ね、そしてこの先、見せていくのだろうか?

僕らはこれまで6人で「Chim↑Pom」という1つの見せ方をずっと考えてきましたが、今は1つのプロジェクトに関わりながらも、6人それぞれのテイストやニュアンスについて考えています。「公共」や画一化している人たちの話をしましたが、やっぱり「道」を作ってきた僕らからすると、大きなスペースとしての公共の場に、パターン化し何か限られた人たちが無数にいるというは、おかしいなと思うんです(笑)
個別の「個」と公共の「公」のバランスが今はすごく悪いバランスになってきていると思うから、個と公をきちんと認識できるように「Chim↑Pom」というものが機能していけばいいな、と思っています。6人のグループ展であれば簡単だけど、それは形態としてもうありますよね。そうではなくて6人のニュアンスを生かしながらも、どう「Chim↑Pom」という一つのプロジェクトができるのかも考えていこうと思っています。

Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

グループで喧嘩したりすることもありますか?

もちろんありますよ(笑)でも「Chim↑Pom」という地層をみんなで作っているという意識があるから、チームとして続いているのだと思います。
最初の頃、一番下の地層は6個違うものが色としてあったと思うんですね。そこからプロジェクトや時期によって、2、3人が混ざっている時もあれば、6人の色が完璧に混ざっている地層もあって、いろいろなグラデーションができてきた。今は、混ざったり混ざらなかったりという部分に加えて、そもそも独立した6色という意識がありますね。
ただ6色が単色としてある状態といっても、昔みたいに、どうしたら混ざれるかわからない中で混じっていくのではなくて、混じり方はわかった上での6色単色になっている。だからこの先どんな地層になるかわからないですけど楽しみですね。

「Chim↑Pom」自体は6人でスタートしたけれど、いろいろなプロジェクトや活動を続ける中で、その都度コラボレーターがものすごく増えています。そう考えると地層も純粋に6人が混ざっていろいろな色になっているだけではないように思います。
(現代美術家の)会田誠さんに、「『Chim↑Pom』はビオトープみたいな感じだよね」って言われたことがあるんです。
6個の生物がもともと一つのビオトープ(自然生態系の一部が見られるような、生物たちの生息空間)にいて、そこへ外から虫が運んできたり影響があって、その生態系が動いたり、新たな生物が生まれたりするような、そんな感じなんだろうな、と。
でもまさしく「公共」の豊かさって、そういうことだと思うんです。勝手にビオトープが育っていくというか、崩壊しなきゃいいわけで、そこはでもみんなが自然と協調していくだろうし。そうしてオリジナルのビオトープができていけばいいな、と思います。

関わりの深い新宿の街で、今後興味深い新たな試みも進行中という彼ら。アートの力で一石を投じ続ける6人の今後に、我々も注目し続けていきたい。

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