より多様で自由な社会を 29回目を迎える
「レインボー・リール東京 〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」

2021.07.14

「第29回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」が716日から、新宿の映画館シネマート新宿で始まる。レズビアン、ゲイ、トランスジェンダーなどさまざまなセクシュアル・マイノリティーをテーマにした作品を、ジャンルを問わず世界中からセレクトし上映する。昨年はコロナ禍で止む無く中止となったが、毎年ボランティアスタッフが運営から作品選定、上映交渉、会場セッティングなどすべて担い、力を合わせながら30年にわたって回を重ねてきた。

「レインボー・リール東京」ロゴ「レインボー・リール東京」ロゴ

1991(平成3)年に、国際連絡会議ILGAInternational Lesbian & Gay Association)の日本における支援・参加団体である「ILGA日本」に加盟する非営利団体として運営委員会が発足した。
これを機に翌1992(平成4)年に「東京国際レズビアン&ゲイ・フィルム&ビデオ・フェスティバル」と題して行ったのが同映画祭の始まりで、今では日本のLGBTQコミュニティの中で最も古いイベントの一つになっている。

1回は中野サンプラザにある研修室で3日間の開催だった。当時映画祭の代表を務めていた南定四郎さんはあるインタビューに、「初めてだから反響はすごかった。プログラムが始まる前から行列だった」と語っている。多様性への理解がまだ浸透していない時代にあって地域から反発の声なども多くあったというが、入場者数900名だったこの映画祭はその後9,000名を超える規模へと広まりを見せた。

吉祥寺バウスシアター(現在は閉館)を経て、第5回からは青山のスパイラルホールをメイン会場に、年によってサテライト会場を設けながら開催してきた。新宿では20082009(平成2021)年に初めて新宿バルト9で、20152017(平成2729)年にシネマート新宿で開催している。中心スタッフを務める村井さんは「以前から新宿で開催したいという思いはずっとあったが、新宿には当時、私たちが要望する形で開催できる映画館が無かった。新宿バルト9ができた時に相談に行ってようやく開催が実現した。休日を利用して地方から映画祭に遊びにきて、その後新宿二丁目に飲みに行くなど新宿の街を楽しむ方もいた」と話す。

過去に開催した「レインボー・リール東京」の様子(会場はスパイラルホール)過去に開催した「レインボー・リール東京」の様子(会場はスパイラルホール)
映画祭の開催期間中、スパイラルホールの入り口に 掲げられるレインボーフラッグ映画祭の開催期間中、スパイラルホールの入り口に 掲げられるレインボーフラッグ

現在、代表理事を務める宮澤英樹さんは「スパイラルホールでの開催は映画館に比べると、客席作りやスクリーンを立てるなど一から作り上げる大変さはあるが、建物入り口にレインボーフラッグがはためき、来場するところからお客さんのテンションも上がって、映画祭ならではのその華やいだ雰囲気は変えがたいものがある。一方映画館は上映環境も良く、行きたいと思っていたけど躊躇していた人たちも参加しやすかったのではないかと思う」と振り返る。

今年は、バルセロナで偶然出会ったアルゼンチン人とスペイン人男性2人の20年にわたる愛の記憶を描いたアルゼンチン映画『世紀の終わり』や、孤独な少女たちのひと夏の恋を描くオーストラリア映画『ストロベリーミルク』、今は亡き同性パートナーの母と子との家族の絆を描いた台湾映画『親愛なる君へ』など、日本初上映作品を含む長編8本を上映する。

『世紀の終わり』©Stray Dogs『世紀の終わり』©Stray Dogs
『ストロベリーミルク』『ストロベリーミルク』
『親愛なる君へ』© 2020 FiLMOSA Production All rights『親愛なる君へ』© 2020 FiLMOSA Production All rights

他にもカナダ、アメリカ、アイルランド、香港、日本などさまざまな国の作品は、4人のプログラム担当スタッフがセレクトした。「セクシュアル・マイノリティーが正しく描かれていることを大前提に、この映画祭に来てくれるお客さんが喜ぶことを意識しながら作品を選ぶようにしている。これまでも配給会社が買い付けた洋画や、国内で製作された邦画など、劇場でもある程度の本数はコンスタントにセクシュアル・マイノリティーの作品を観ることはできた。でもそれを遥かに上回るたくさんの作品が日本では紹介されずに終わっている。この映画祭ではそれらの作品をまとめて紹介できる。近年は同性婚や家族の新しい形をテーマに描いたり、セクシュアル・マイノリティーを特別な存在として扱うのでなく、当たり前にいる存在として描かれたりするなど、作品の幅もより広がってきた。社会の状況を反映しながら、時代とともに映画のカラーも変化してきている」と村井さん。

 今年のメインビジュアル今年のメインビジュアル

今年はコロナ禍で感染拡大防止の観点から毎年会場にしていたスパイラルホールでの開催は見送ったが、新たな取り組みとして本祭中では初めてとなるオンライン上映「QUEER×APAC2021〜アジア・太平洋短編集〜」に取り組む。ロマンス・スリラー『フロス』やヒューマンドラマ『リップスティック』などアジア・太平洋地域の新作短編映画を配信する。また新宿での実施に続いて、21年ぶりに関西エリア(シネマート心斎橋)でも上映を行う。

過去に開催した「レインボー・リール東京」の会場の様子(スパイラルホール)過去に開催した「レインボー・リール東京」の会場の様子(スパイラルホール)

宮澤さんは「これまでイベント当日は100人近いボランティアが集まり、もぎりから受付、会場案内などすべてを手分けしてやってきた。今回は映画館にご協力いただきスタッフも最小限での試みとなったが、スタッフたちの『今年は開催したい』という思いが実現できて良かった。元々ヘテロセクシュアル(異性愛者)の女性の来場者は多かったが、最近は様々な立場の人がLGBTQに関心を持って来場してくれているのを強く感じる。LGBTQを取り巻く環境は少しずつ変わってきていて、地道に活動を続けていくことで理解が進み、社会が変化していくのではないかと思う。この映画祭がなくなる時というのは完全に差別がない、誰もがありのままでいられる、そんな時なのだと思う。500円で見られるU22特別優待も実施しているので、ずっと通ってくださっているファンの方はもちろん、若い世代にも足を運んでもらって広く世界の作品に触れてもらえたら」と呼び掛ける。

関連URL

レインボー・リール東京
https://rainbowreeltokyo.com/

『親愛なる君へ』
http://filmott.com/shin-ai/
7月23(金・祝) シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開
配給: エスピーオー、フィルモット
© 2020 FiLMOSA Production All rights

LGBTQとは、(L)レズビアン/女性同性愛者、(G)ゲイ/男性同性愛者、(B)バイセクシュアル/両性愛者、(T)トランスジェンダー/性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人、(Q)クイア/規範的な性のあり方以外を包括する言葉、クエスチョニング/自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人、わからない人等、の頭文字をとった言葉。(参照:NPO法人 東京レインボープライドHP)

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