—歌舞伎町より歌舞伎町らしい
歌舞伎町の野外で開催されたパフォーマンスイベント
「歌舞伎超祭」<後編>

2022.04.22

手塚マキさん
2021年11月20日、歌舞伎町シネシティ広場で開催された「歌舞伎超祭」(主催は歌舞伎町商店街振興組合)。前編ではイベントの模様をお伝えしたが、後編ではオーガナイザーとして同イベントに関わった歌舞伎町商店街振興組合常務理事で、Smappa!Gropu会長の手塚マキさんにお話を伺った。手塚さんは同イベントのプロデューサーにOi-chanを迎えたその人でもある。
2021年11月20日、歌舞伎町シネシティ広場で開催された「歌舞伎超祭」(主催は歌舞伎町商店街振興組合)。前編ではイベントの模様をお伝えしたが、後編ではオーガナイザーとして同イベントに関わった歌舞伎町商店街振興組合常務理事で、Smappa!Gropu会長の手塚マキさんにお話を伺った。手塚さんは同イベントのプロデューサーにOi-chanを迎えたその人でもある。

手塚マキさん
愛シャクレ熱(ラブマリアとキリーシャクレイ) Ⓒ夢無子

編集部:
Oi-chanにプロデュースをお願いされたのはどのような経緯だったのでしょうか?

手塚マキさん
歌舞伎町シネシティ広場の横に現在建設中の「東急歌舞伎町タワー」を手掛ける東急さんが以前から、街と繋がりながら歌舞伎町を文化で醸成したいという思いと共に、広場の有効的な活用に向けて恒常的にイベントをしたいとずっと歌舞伎町商店街振興組合(以下、組合)に話を持ちかけてくれていたんです。今回も一つの案として、ストリートライブやダンスなどのパフォーマンスイベントができたらというアイディアを聞きました。
組合内で「よその街から見てもかっこいいと評価してもらえるような街にしていきたい」と話していたこともあったので、僕はもっと前衛的で「さすが歌舞伎町だね」と言われるようなものをやった方がいいのではと提案しました。Oi-chanは以前パーティーなどで会って知っていました。歌舞伎町の野外でイベントをやれる面白さと、多様性の街の魅力を表現するようなトータルプロデュースが出来るような人を私はOi-chanしか知りません。組合がやりたいと言っていたイベントの条件を叶えるうってつけの人だと思いました。

小源氏亮太 Ⓒ夢無子
ちびもえこ Ⓒ夢無子

編集部:
Oi-chanの反応はいかがでしたか?

手塚マキさん
コロナ禍でイベントができなくなっている中、「歌舞伎町の野外でできるなんて、めっちゃおもしろそうだね」とノリノリでした。かつてOi-chanが新宿でずっとやってきた伝説的なイベントもあったので、「その流れを汲んでやるということも自分にとっては意味があるし、すごくいい」と言ってくれました。

編集部:
コロナ禍での開催には苦労も多々あったのではないでしょうか。

手塚マキさん
開催が1ヶ月後に迫ったある日、組合の会議に遅刻して出席すると中止が決まっていたんです。コロナが完全に収束していないものの、感染者数も減少傾向であって、特に行政からそのような通達がでていたわけでもなく、感染対策をしっかり取っていればOKだったので、明確な理由がわかりませんでした。
この判断はOi-chan、演者の皆さん、そして予算の調整から資料づくりなど運営に関わる事務的なことを本当に一生懸命やってくれていた東急さんに対しても失礼だと僕は思いました。感染リスクの少ない野外で人数制限をして行うイベントに対してネガティブなことを言ってしまったら、一体この歌舞伎町で何をもって文化で牽引するんだ、こんな状況だからこそ率先してイベントを行う、その役目を担うのが歌舞伎町ではないか、と思いの丈をぶつけ、開催にこぎつけました。

色即是空(Rion+陸+Chikako) Ⓒ夢無子
SNATCH Ⓒ夢無子

編集部:
演目は、今回のイベントのために演者が作ったものもあると伺いました。

手塚マキさん
直前まで開催ができるかわからない中でも、歌舞伎町の路上でイベントができて、これだけのメンバーが集まるとなった時に、ギャラといったようなことなどより、ステージで「どう面白いことができるか」、そこを一番にみんな考えたのだと思います。演者にとってはそれがパフォーマンスする面白みでもあるし、責任でもあると感じられたのではないでしょうか。ゴジラやモスラの衣装などもありましたが、それも今回のためにわざわざ作ってくれたみたいです。

編集部:
実際に最後までイベントをご覧になって、いかがでしたか?

手塚マキさん
エンディングはちょっと泣いたかもしれないくらい感動しました。ポールダンサーのKUMIさんが「良い風が吹いています」とトークの中で言っていましたが、本当にその通りで、会場には家族連れも来てくれていましたし、演者も含めて会場の空気感がすばらしかったです。歌舞伎町の街が持っているパワーや魅力というのは、こうして語ることはあるかもしれませんが、店の中に一歩入ってしまえば普通に店ですし、街としての概念的なエネルギーを何かに昇華したり皆さんに伝えたりできるのは、彼らアーティストなんだということをすごく感じました。きっと僕らよりも演者の皆さんは、街の持つパワーや魅力をすごく考えただろうし、街の歴史なども調べて演目を作ったとも聞きました。自分たちを見せるためのステージである歌舞伎町がどういうものであるかというのをしっかり捉えていて、僕はアーティストに対してとてもリスペクトの気持ちが生まれました。

SIS Ⓒ夢無子
ブイヤベース Ⓒ夢無子

編集部:
「歌舞伎町らしい」と表現されるようなステージですが、歴史や街の有り様に非常に呼応したパフォーマンスだったのですね。

手塚マキさん
もしかすると世間一般の人がイメージする歌舞伎町や、歌舞伎町を表現するとこうしたものになるんだろうな、と思います。でも僕たちにとってリアルな「歌舞伎町」は実は全然違っていて、けっこう普通です。だから演者の皆さんはどこか特徴を誇張したような演目を通して、実際の歌舞伎町よりも「より歌舞伎町らしいこと」を見せてくれたと思うんですよね。でも、それが非常に街に馴染んでいたように感じました。そういう意味でも素晴らしかったと思います。来年もぜひやりたいですね。

Kazane+KENGO Ⓒ夢無子
ヒロスミ&ヨシユキ+Cerestia Grown Ⓒ夢無子

編集部:
今後広場で行われるイベントについての思いをお聞かせください。

手塚マキさん
僕の考えではもう一回Oi-chanにお願いしたいと思っています。今回は初めてだった上にかなり制限がある中での開催でした。やり方もわかって、次はさらに楽しくできると思うし、一回で終わらせてしまうのはもったいないと感じています。
飲食なども今回はできませんでしたが、アイディアとしては例えば長いイベントなので、最初の方に出た人がその後、近隣の店で何かパフォーマンスするなど、会場がいくつかあってもいいと思いました。ライブ映像を見ながら飲んで、また広場に移動したり。
それから今回最初は、歌舞伎町のお店の人たちがマルシェを出すという話もあったんです。近隣のお店のモノが買えたり、お店に行くと特典があるようなチケットがもらえたり、小さな「歌舞伎町のれん街」のようなものをイメージしていました。組合が主催するからこそ、街にもお金が落とせるようになれれば良いですし、今まで組合と関わり合いがなかったような人たちがイベントをきっかけに、主催している組合に興味を持ってくれたらと思っています。20代、30代といった若い子たちが「組合って面白いね、うちも商売しているからマルシェに出させてください」と街に対して地元意識を持ってくれたら、世代間も越えて街が盛り上がっていくのではと思っています。

MASHUFO(清水舞手+UFO) Ⓒ夢無子

編集部:
以前から、街を面白くするために「街を文化で醸成させる」とお話されていました。手塚さんが「文化」を大事に考えられているのはなぜでしょうか?

手塚マキさん
だって、それ以外に面白いことなくないですか?(笑)
文化の面白さって今すぐに生まれるものではなくて、ずっと積み重なってきているものだと思うんです。人間が命を繋いできた『形ないもの』として残っていて、成熟社会の中で僕たちが人として生きている意味って、そうした価値以外に何か大事なものがあるのかなっていう気がします。本当は、行けばいつも何か文化に触れられるような場所があったらいいのかもしれません。でも文化ってお金にならないし、そもそも商売色が強くなるとなかなか醸成されない。だからこそ、歌舞伎町シネシティ広場のような存在ってすごく価値があると思うんです。誰のものでもないですし。そんな場所で、こうしたイベントを組合がサポートして行うというのは、歌舞伎町らしくていいと思っています。なかなか見られない、ああいう演目だからこそ組合でやる意味があるし、そこから何か次に繋がっていけばいいと思います。

Ⓒ夢無子

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