ネオンきらめくスケートリンクも出現
歌舞伎町という街の魅力を発信する 「歌舞伎町シネシティ広場」

2020.08.28

歌舞伎町には、ゴジラのいる映画館TOHOシネマズ新宿、ナイトクラブ「WARP SHINJUKU」などが入るビル、ホテルなどに四方を囲まれた「歌舞伎町シネシティ広場」がある。広場の西側では「歌舞伎町一丁目地区開発計画」が進められ、ホテル、映画館、劇場、ライブホールなど有する新高層ビルがまさに建設中だ。

この一帯はかつて角筈(つのはず)地区と呼ばれ、広場は終戦後、同地区会長だった鈴木喜兵衛が先導した街の復興計画の中で造られたものであった。日本や海外で多くの都市・地域計画に関わられている都市学の大家、戸沼幸市さんはその空間について「ヨーロッパの街の造り方と非常に似て、噴水を設けた広場を中心に、その周りを取り囲むように劇場などを誘致、建設しようとした。仕事と休息、楽しみを得られるような、『人間を元気づける街づくり』だったと言える」と以前お話しくださった。

歌舞伎町シネシティ広場

歌舞伎町シネシティ広場

「ヤングスポット」と呼ばれ噴水のあった広場は段階的に姿と名前を変え、新宿を訪れる人たちへ「歌舞伎町の楽しさ、魅力」を発信する重要な空間としての機能も併せ持つようになった。
さまざまなイベントが行われる中、201912月、広場に出現したのはパネルスケートリンクであった。これまでにない約2週間というロングランイベント「歌舞伎町X’mas スケートリンク」は、地元・歌舞伎町商店街振興組合、歌舞伎町タウン・マネージメントが主催し、広場を囲む企業をはじめ、さまざまな協力により実現した。オープニングには、プロフィギュアスケーターの安藤美姫さんと吉本興業の芸人らによるトークショー、デモンストレーションなどが行われ、クリスマスまでの12日間、約800人の老若男女、訪日外国人が繁華街の真ん中でスケート遊びに興じた。

オープニングイベントの様子

オープニングイベントの様子

歌舞伎町商店街振興組合理事長の片桐基次さんは、「今までのイベントは1日〜数日だったので、長い期間展開ができたのはとても良い形だったと思います。クリスマス時期は、それぞれ街ごとに大きな仕掛けなどが見られますが、視点を変え、歌舞伎町らしい面白いものができたらという思いがありました」と振り返る。

また、日々、歌舞伎町の現状を見ている歌舞伎町タウン・マネージメント事務局長の柏木直行さんも「イベントでは皆さん楽しそうに滑っていらっしゃったのが印象的でした。冬の広場は非常に寒いので、体を動かすイベントというのは寒さも吹き飛ばせるし向いているように思います」と話す。

ライトアップされたパネル製のスケートリンク

ライトアップされたパネル製のスケートリンク

ある年代の方には懐かしく思い出されるかもしれないが、かつてこの広場に面した旧ミラノビル(「新宿TOKYU MILANO」)にはスケートリンクが併設されていて、娯楽の少ない時代、人々は楽しみを求めて歌舞伎町に集まってきたという。そんなスケートリンクと親和性も高い街での久しぶりのスケートリンクの開催は、設営・運営を手掛けた株式会社ワックにとっても新しい発見が多くあったという。

かつて「新宿TOKYU MILANO」に併設され人気を博したスケートリンク(外観) 資料提供先・所蔵先 東急レクリエーション

かつて「新宿TOKYU MILANO」に併設され人気を博したスケートリンク(外観)
資料提供先・所蔵先 東急レクリエーション

当時、スケートを楽しむ人々の様子 資料提供先・所蔵先 東急レクリエーション

当時、スケートを楽しむ人々の様子
資料提供先・所蔵先 東急レクリエーション

同社の興津元明さんは、

今回使用したのは、樹脂でできたパネル製のスケートリンクです。
これまで商業施設のイベントホールや遊園地などで展開してきましたが、日本有数の街の中心で、我々が手掛けてきた中でもかなり大きなサイズでの開催は、非常に貴重な経験となりました。設営中も、周辺を通行する方々からいろいろと声かけや暖かい声援を多く頂き、想像以上に好意的に迎えていただきました。

と振り返る。

スケートリンク設営の様子

スケートリンク設営の様子

同じくスタッフの清水京介さんは、

広場の地面は、雨などの水が流れるように造られているため、思った以上に勾配があってフラットではないので、まずは平らな土台を作るところから始めなくてはなりませんでした。人が多く行き交う場所への大型トラックでの搬入も普段はあまりないのですが、様々な方にご協力いただきスムーズに進みました。人と人との距離感の近い街というか、どんどんコミュニケーションを取ってきてくださるので、開催中もイベントの説明など非常にお話ししやすかったです。

と話す。

スケートリンク設営の様子

スケートリンク設営の様子

通りすがりにそのまま遊んで行く人、歌舞伎町に遊びにきて「おもしろいことをやっている」と知って参加する人など、客層は曜日、時間帯ごとに実にさまざまだったという。

スケートというとお子さま連れのファミリーが多いイメージですが、想像以上に大人の方、若いカップルやお仕事帰りのサラリーマン、そしてインバウンドの方が多かったのが印象に残っています。どちらかというと日本の方は遠巻きに見ているような雰囲気がありましたが、海外の方は「何やっているの? おもしろそう」と積極的にリンクに上がる方が多かったです。比較的大きめのスケートシューズも揃えていたのですが、海外からのお客さまでは一番大きな30センチの靴でも小さい方もいらっしゃって、観光客で賑わう繁華街ならではと思いました。広場という場所柄、あらゆる方がターゲットになっていたので、いろいろな方に来ていただけたのではと思います。

街の中の広場という立地を活かし、歌舞伎町で楽しめるさまざまなコンテンツの一つとしてスケートを提供できたことは良かったと思います。白いパネルは氷のリンクに比べて非常にフラットで光も反射しやすいので、特に夕方以降は街なかのネオンともあいまって、カラフルな照明が映え、インスタ映えもして、注目度が高かったように思います。

オープニングイベントに登場したプロフィギュアスケーターの安藤美姫さん

オープニングイベントに登場したプロフィギュアスケーターの安藤美姫さん

広場での初めてのスケートイベントを終え、興津さんは、

一回きりのものでなく恒例のイベントとして、また氷のスケートリンクも毎年さまざまな場所で運営しているので、ぜひ歌舞伎町でもアイススケートリンクに挑戦させていただき、引き続き関わっていけたらと思っています。アイススポーツの人気は年々高まっている一方、常設のスケートリンクは減っていることもあり、スケートイベントは喜んでいただけるのでは。

と話す。

同振興組合事務局長の城克さんは今後の活用について「これまで広場でイベントを行う目的はクリーンな空間づくりに向けたものでもあり、長きにわたって実施してきたことで、目標に対しても貢献してきたと思います。よりイベントがしやすい広場になった今、企業にはいろいろとアイディアを出してもらえたらと思います。企業が街と関わり合い、街を活用しながら盛り上げようようとする時に、我々街側も安全を確保しつつバックアップできたらと思っています」と話す。

街や周辺企業にとっても、次の冬の開催に向けて、「街の風物詩になれたら」「歌舞伎町にいけば何か楽しいイベントをやっている、そんな街のイメージを醸成していけたら」と期待も高まりつつあった中で起きたのが、新型コロナウィルスの感染拡大であった。

左から、城克さん、片桐基次さん、柏木直行さん

左から、城克さん、片桐基次さん、柏木直行さん

柏木さんは「街の掃除を日常化し、また各イベントを重ねて来たことも功を奏し、ようやくきれいで安全なイメージも定着し、街としての活性化の流れがでてきたところのコロナ禍。歌舞伎町は訪日外国人も多く、人との関わり合いの深い街ですから心配していました。収束がいつになるかはわかりませんが、少しでも明るい話題を提供できればと思っていますと話す。

興津さんは、

実はスケートは来場者同士の距離を一定に保つため、イベントとしては新型コロナ感染対策に適応できるものとなっています。当社では一人当たりのスペース設定を次の冬から広めに取って収容人数を管理することで、ソーシャルディスタンスを確保しながらイベント運営を進めることができます。

と期待を込める。

また、片桐さんは「歌舞伎町をあげてイメージを変えていく努力を、街の者たちが連携努力し、ここまで積み重ねてきていました。このところ夜の街の象徴のように扱われていることは、街の当事者として、苦しくも、悔しくもあります。いつまでコロナ禍が続くのか心配ではありますが、これまでに増して歌舞伎町ががんばっている姿を見せていく、それが一番ではないかと思います。今後さらにさまざまな企業ともコラボしてみたいですし、歌舞伎町のイメージをより良くしていくための企画も推進したい。広まってしまった『夜の街』の象徴というような一方通行のイメージから、もともとこの街がもっているポテンシャルを駆使して、『誰でも楽しい街』というイメージに転化できるような、歌舞伎町ならではのキャンペーンを行っていくチャンスがあるかもしれないと考えています。
昨年冬に行ったスケートリンクイベントもとても良かった。今後は皆さんの声から開催時間や期間を延長したり、音や光をさらに効果的に使ったり、アイススケートリンクにすることなどを検討していき、楽しく明るい歌舞伎町の街イメージに貢献できるよう重ねてブラッシュアップしていきたいと思います。今後の歌舞伎町のイメージを象徴するようなイベントとして、多くの皆さんに楽しんでいただけるイベントなのではないかという手応えも感じています。「夜の街」の暗いイメージを払拭し、賑やかさを取り戻せるのか、どうしたら安心してきてもらえるのか、街としてそこを一番大切に考えていきたいと思っています」と言葉に力を込めた。

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