2013年、「アジアのNEXT ARTIST × HOTEL」をテーマにしたおしゃれなデザインホテル「新宿グランベルホテル」が新宿の歌舞伎町2丁目に誕生した。UDS株式会社(渋谷区)がデザインを、株式会社フレンドステージ(埼玉県上尾市)が運営を手掛ける。
2006年に渋谷と赤坂にオープンしたグランベルホテル。新宿は地上17階に485室(オープン当初は380室、その後105室増床)を有するフラッグシップホテルである。百貨店、歌舞伎町やゴールデン街、新宿御苑などにもほど近いホテルのその最大の特徴は、アーティストの手によって、アートと融合した空間が創造されたことであろう。
支配人を務める丸山英男さんは、「世界でも名を知られあちこちから人が集まる『歌舞伎町』に、新たに建てるホテルが街に溶け込めるとしたらどのような感じにすればいいのか、いろいろ議論を重ねてたどり着いたキーワードが『HIP』『エッジ』『官能的』だったと聞いております」と話す。
「歌舞伎町自体、街のパワーが非常に強いので、そのパワーをうまく吸収しながら、ホテルとしても個性を打ち出していきたい。そうした中で、我々が上手に表現できることというのは、渋谷や赤坂でのホテル展開でも評価いただいた『アート』という、デザインに特化したホテルということだったと思います」とも。
客室は、シングル、ダブル、ツインタイプなどあるスタンダードルーム、ヴィラタイプ、スカイタイプ2種のロフトルーム、部屋ごとにデザインを凝らしたエグゼクティブルーム、スイートルームの4つのカテゴリーに分かれる。「シンプルなデザインのお部屋もありますが、やはりデザイン的に個性あるお部屋がお客さまを惹きつけていると感じます」と丸山さん。
日本をはじめ、韓国、中国、台湾、カンボジアから21組のデザイナー、アーティストが集結、「FUN to STAY」を目指した空間作りを提案する。例えば、長いロールスクリーンに「東京の夜景」「東京の交通」などをテーマにしたグラフィックデザインが施された部屋や、香港のライフスタイルショップGODの提案する部屋は、壁にステンシルと銅板が使われ、香港の油麻地(ヤウマーテイ)地区のデザインをホテル室内に掛け合わせたアーティスティックな空間となっていたりする。
現在、宿泊客の約9割がインバウンドという。新宿を宿泊地に選ぶ理由を丸山さんは「何はともあれ、『歌舞伎町』という街なんですよね。歌舞伎町にホテルがあるだけで行ってみたいと予約してくださる海外の方が多い。そして海外から旅行にいらっしゃる方からすると「近く」というエリアが日本人より広い感じがします。当ホテルに滞在されながら、新宿界隈だけでなく渋谷や銀座、六本木などへ遊びにいかれる方も多いように思います」と話す。
開業当初はオープンしたことを広く告知するなど苦労もあったそうだが、オープンして1年が過ぎた辺りから、インバウンドの急激な増加が見られたという。「求められるサービスが国内のゲストとは違うということを多く気づかされました。言語の問題、預かり荷物の多さの問題、インフォメーション量の多さの問題など。これまでの5年間、そしてこれからもハード面、ソフト面ともに課題解決の連続だと覚悟しています」と丸山さんは話す。
口コミや、デザイン性の高い部屋などがメディアで紹介されることもあり、アジア大手のホテル予約サイト「agoda」の2016年度ゴールドサークルアワードなども受賞。周囲には同等の高さのビルがほとんどなく、約180度見渡せるパノラマを活かした13階のルーフトップバー「roof top bar & terrace G」も人気を後押しした。
「ホテルの名前よりバーの名前を先に知ってくださった日本人の方も多いのではないでしょうか。日本人の5割は宿泊客ではなく、食事にきたり、飲みにきたり、行列ができるほど足を運んでいただいて、途中でテラスを改装して席数を増やしたほどです」と丸山さん。
開業とともに5年を新宿で過ごしてきた丸山さんは「新宿はいまだに慣れないですね」と笑う。「さまざまな人が朝から夜までいて刺激がありますよね。面白いからこそ、慣れないんだと思いますけど」と言う。
「世界中のいろいろな国の方に来てもらいたいというのは、当初から変わらない思いです。時代によって、その時々に求められることは変わっていきます。お客さまのご希望が細分化、多様化する中で、自分たちのホテルが何を強みに、質の高いサービスを提供していくことができるか、日々勉強です。もちろん日本の方の中にも、まだまだ我々のことを知らない方もたくさんいらっしゃいますし、多くの方に支持されるホテルを目指したいと思っています」と意気込みを見せる。
関連リンク
「新宿グランベルホテル」 http://www.granbellhotel.jp/shinjuku/