新宿で独立の夢を叶えた「2H barber shop」
髪を切るだけではない、新たな「バーバー」カルチャー

2021.08.19

近年、海外から発信され人気になっている男性のヘアスタイル「バーバー(barber)スタイル」を求め、カットサロン(美容室)ではなく男性専用のバーバー(barber=理容室)を選ぶ人が増えているという。そんな中まさに新しい形のバーバーを提案したいと5月、新宿にオープンしたのが「2H barber shop(ツーエイチ バーバーショップ)」だ。店長の齊藤涼太さんは銀座の理容室で6年働いた後、27歳で独立して店を構えた。

店長の齊藤涼太さん。店名の2Hは、齊藤さんが生まれ育った北海道の北斗市と函館市へのリスペクトを込め、双方の頭文字から名付けた

新宿の西口エリア、駅から徒歩3分に立地するビルの4階。扉を開けた先には齊藤さんのこだわりが詰まった空間が広がる。6席設けた座席のうち、大きな窓から自然光の入る窓際のオープン2席はアメリカンスタイルの大衆床屋をイメージし、ほかの4席は日本の高級理容室をイメージした完全個室になっている。

同店が手掛ける「バーバースタイル」(イメージ)

齊藤さんは、「バーバースタイルにはフェードカット(刈り上げスタイル)などがあり、以前から提供する店もあったが、当時は少し攻めたようなヘアスタイルに感じられて好きな人だけがやっていた。それまでの日本ではバーバーよりも個室を備えた高級理容室が人気だった。流行の発信源はオランダ・ロッテルダムのバーバー『SCHOREM(シュコーラム)』で、数年前にオーナーたちが来日して行ったカットショーなどのイベントや、彼らがプロデュースする整髪料が人気を呼び徐々に広まっていった。ファッションやインテリアなどを含めそうしたカルチャーの影響を受けた日本のバーバーが流行の火付け役となり、さらに最近はYouTubeやインスタグラムなどのSNSでスタイルを発信しやすくなったこともあって、多くの人がバーバースタイルを求めるようになった」と話す。

アメリカンスタイルの床屋をイメージした席
4室ある完全個室。「極上ヘッドスパカットコース」で味わえるリラックスは、一度体験してもらいたいコースと齊藤さん

店を立ち上げる際、「バーバースタイルを提供するという点では、内装も重要になってくる」と考えた齊藤さんは、タイル、コンクリート、真鍮などの素材とデザイン性のある調光を使いたいと業者と打ち合わせを重ね、あえて作り込み過ぎないようリラックスできる雰囲気を目指した。「オーソドックスな内装としては、人気のサブウェイタイル(アメリカ・ニューヨークの地下鉄構内の壁などに使われているタイル。近年では店や住宅のインテリアに使われるなど日本でも人気がある)などを使ったバーバーが多いと感じる。僕はどこか昭和っぽい、銭湯などに見られるようなタイルを今風に取り入れたらかっこいいと思って、少しずつ色の違うタイルをランダムに使うことにした。さらに普通は横に貼るところを縦に並べたのもこだわったところ。ほかの理容室でこうした色目のタイルを縦に使っているところはあまりないので、オリジナルな空間に仕上がったと思う」

海外のバーバースタイルながら、どこか懐かしさを感じるタイル
壁と同様、タイルを敷いた座席の足元

北海道生まれの齊藤さんは専門学校を卒業後、そのまま地元の理容室に就職し約1年半勤めた。「憧れのあった東京に上京したいと思っていたところ友人に紹介してもらい、銀座の高級理容室『ヘアモードキクチ』で働き始めた。東京は圧倒的に客数が多く、お客さまから聞く話も興味深くて毎日が刺激に満ちていた。27歳までに独立できるなら、東京で仕事を続けようと決めていた。銀座から離れたくないと考えるスタッフも少なくない中、勤務先のオーナーが候補地として新宿を紹介してくれた時、『とにかく人の多い街でできるのなら』と即決した。大きな街でチャレンジしたいという思いは強くあった」と振り返る。
緊急事態宣言発令下でのオープンとなったが、売り上げは順調で「客層は20代後半〜30代が中心。通りがかりに看板を見て『ずっと気になっていて行きたいと思っていた』と来店してくれる人もいる。毎日必死だけど、充実していて本当に楽しい」と齊藤さん。

「実はこのエリアは、実際に店舗はあるのかもしれないけれど、ネットで簡単に検索してヒットする男性専用のカットサロンの件数が圧倒的に少ないので、まだまだ界隈のオフィスワーカーなどに需要があるように思う。理容室は眉を整えるなどカミソリを扱う技術を持っている。また当店はカットにクイックフェイシャルマッサージやミストシェービングを組み合わせたコースなども提供しているので、ビジネスシーンで清潔感を出したい方、よりカチッとしたヘアスタイルを求める方など、店を知って足を運んでもらえるようなきっかけ作りをどんどんしていければ。コロナ禍が収束したら、店内で飲み物を出して会話するなど交流も楽しめたら」と意気込む。

ヘアスタイルやファッションなどカルチャーの発信源として、また新たなコミュニティーの場として、これからの新しい「バーバー」展開に注目していきたい。

コロナ禍で頑張るビジネスパーソンや学生を応援したいと、同郷・北海道出身の来店者に向けた「上京応援キャンペーン」も展開中

関連URL

2H barber shop
https://www.2hbarbershop.com
東京都新宿区西新宿1-15-5升屋ビル4F
営業時間:平日11時〜21時、土日祝日930分〜19時。

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歌舞伎町文化新聞編集部の略称アイコンです。

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