3D動画「巨大猫」も話題に
新宿東口駅前に誕生した「クロス新宿ビジョン」

2021.09.30

新宿駅東口を新宿大通り方面へ出ると、アルタビジョンの左手の方に新たに湾曲形状をした街頭ビジョンが設置されたのが見える。7月12日から本放映が始まったクロス新宿ビル屋上のディスプレイだ。7月1日から仮放映された映像の一つ、大きな三毛猫の3D動画は「巨大な猫がリアルに動く!」と一躍SNSなどで話題になり、国内外で大きな反響を呼んだ。

JR新宿駅と歌舞伎町を結ぶモア二番街の入口に立地する同ビルは、地下1階にカフェを併設し、地上階は1~3階まですべてがイベントスペース クロス新宿スペースになる予定。12階は全面開放できる大開口サッシになっていて、ビルの外壁もまるごとラッピングできるプロモーション専用ビルである。

ビルの運営は株式会社クロススペースが、クロス新宿ビジョンは株式会社マイクロアドデジタルサイネージと株式会社ユニカが共同運営する。今回はユニカ 不動産事業本部 営業二部兼デジタルソリューション部の藤沼良丞さんに、ビジョンや話題の3D動画誕生のいきさつ、そして今後の展開などについて伺った。

編集部:
クロス新宿ビジョンはどのような経緯で設置されたのですか?

藤沼さん:
ビルが立つこの土地は面積こそ狭いものの、世界最大の乗降客数を誇る新宿駅前という「超一等地」に位置しています。歌舞伎町へ向かう通り沿いで元々非常に人通りが多いのですが、再開発が進み新宿の東西が地上でも繋がれば、この場所は南北・東西の歩行者動線の「交差点」になる場所です。「クロス新宿ビル」という名前にその思いを込めると共に、何か駅前のランドマークとして皆さんに親しんでもらえる方法をと考え、屋上に大型ビジョンを設置する計画が立ち上がりました。

当社はすぐ近くでユニカビルを運営しているのですが、ユニカビルも同じような経緯で、ビジョンをつけ、地域のランドマークに育てて参りました。ユニカビジョン設置からこれまでの展開を評価いただき、今回クロス新宿ビジョンを共同運営させて頂くことに至りました。

編集部:
ビジョンの形はどのように決められたのでしょうか?

藤沼さん:
この場所を最大限活かすのであれば曲面かL字のどちらかと考え、駅前広場内の広範囲からよく見える湾曲形状を選択しました。その上でフォルムを活かした3D映像も放映可能なビジョンであることが、大きなアピールポイントになるのではないかと考えました。
23年前から、韓国や中国、イギリス等の街頭ビジョンで放映される3Dコンテンツが話題になっておりました。特に韓国の「WAVE」という波の映像は、その映像美から3D映像の代表例のようになっておりました。日本ではまだあまり例がないので、まずサンプルになる動画を自社で作ろうと考え、作る以上はその映像自体がバズるとよいと期待しておりました。

編集部:
巨大猫の3D動画は、圧倒的なインパクトで一気に注目を集めましたね。

藤沼さん:
何かオリジナルな動画を作れたらとコンペ形式で数社に声を掛けさせていただきました。いろいろ頂いたアイディアの中には生き物系のプランもいくつかあったのですが、オムニバス・ジャパンさんの企画の中に、ビルの中に猫がいるような手書きのアイディアが一つはさまっていて、それを見た瞬間、打ち合わせ参加者全員が「これ、いい!」となりました。まだ猫の映像を作ることを決定する前から、渋谷駅前のハチ公のように、新宿はこの猫が待ち合わせのシンボルになったら最高だ、と妄想しました(笑)。その他、岩で出来た壁がだんだん柔らかくなっていくなど、より芸術的な映像案もあったのですが、営業担当の我々にとっても、通り掛かりの人にとっても「あの猫が住んでいるビル」というと話のきっかけにもなりますし、わかりやすいのではないかと思いました。

動画は、さまざまな映像作品を手掛けるほか、多方面の分野に渡り技術開発・クリエイティブ制作を行っているオムニバス・ジャパンのエグゼクティブクリエイティブディレクター 山本信一さんが企画した。山本さんはメディアアーティスト(クリエイティブレーベル「superSymmetry」の中心メンバー)として国内外で作品を発表するほか、アートイベント「新宿クリエイターズ・フェスタ」にも2013年から参加、新宿の街頭ビジョンで発光する色面のような作品を展開したり、伝統文化との映像コラボレーション作品を多数のビジョンで同時に発表したりするなどビジョンと街の関わりを、アートを通じて提案してきた。

リアルな猫の表現は、アジア全域版アカデミー賞である「第12回アジア・フィルム・アワード」で最優秀視覚効果賞を受賞した映画『空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎』で、CGの主役である黒猫と虎のCGスーパーバイザーを担当した経験を持つ、青山寛和を中心としたチームが手掛けた。

現在、猫が間違えてスイッチを押してビジョンに映し出される『おはよう篇』、寝落ちしてスイッチを消してしまう『おやすみ篇』、そして『おしゃべり篇』の3種類の動画を放映する。

藤沼さん:
放映後は「思ったよりビジョンが大きく迫力がある!」など、好意的な感想を多く頂いています。現地でリアルに見られる方だけでなく、ネット上での拡散により多くの人に届き、その反響は想像以上でした。画質にこだわりたいというオーナーの要望に応え、150㎡超級では国内唯一の4K相当、6mmピッチの大型ビジョンです。

外国人観光客も非常に多く訪れる新宿で“和を感じられる毛色”にと、三毛猫に決定した。作り手の遊び心で、三毛猫の模様の一つに新宿区の形がさりげなく隠されている。藤沼さんたちも後日SNSで知ったという

編集部:
今後どのようにビジョンを展開していこうと考えられていますか?

藤沼さん:
現状スマホではうまく3D放映を撮影できないので、拡散という点では改善していけたらと考えています。
また巨大猫の映像は、先述の通り当初は3D映像のサンプルという役割を担っておりました。そしてその役割は十分に果たしてもらった今、現状多くの方に評価頂いているのは、最先端のCG技術で描かれた本物そっくりな猫が、ただビルに住んでいる、という点であると思っています。今後は、この猫が新宿駅前の待ち合わせシンボルとして定着していくように、今この猫を応援してくださっている方々の期待に応えていけるようなキャラクター作り、ストーリー展開ができたらと思っています。

実は現在Twitter「新宿東口の猫」(@cross_s_vision)で、クロス新宿ビルに住んでいる猫が新宿のいろいろな場所へ散歩にいくような漫画を投稿しています。これまでに都庁や思い出横丁、ユニカビジョンなど訪れており、今後も新宿の観光スポットなどを紹介していけたらと考えています。現在コロナ禍にありますが、元々は海外からたくさんの観光客が訪れる街です。状況が落ち着いてまた観光客が戻ってきた際には、皆さんクロス新宿ビジョンの猫も撮りに来てくださると思っています。その時までには投稿した漫画も増えていますので、猫が訪れたスポットを巡れるような冊子を製作する予定です。クロス新宿ビルの地下はイートイン、1Fはテイクアウトのカフェを営業予定ですので、観光客の方が立ち寄って、コーヒーと冊子を手に街歩きへ繰り出す、そんな新宿の観光拠点になれれば嬉しいです。

「現地に来られない国内外の人にも広く見てもらえるように」と通り向かいにある建物に設置したカメラからのYouTubeライブ配信や、180度視界が操作できるVRカメラによるYouTubeライブ配信は、これまでの街頭ビジョンにはない手法

編集部:
新宿アルタビジョン、YUNIKA VISION(ユニカビジョン)と3つの街頭ビジョンでのシンクロ放映も、早速実施されました。

藤沼さん:
第一弾としてオリンピック・パラリンピックの結果速報を伝える「TOKYO 2020 KYODO SPORTS NEWS」の放映を行いました。クロス新宿ビジョンを手掛ける中で、我々もスタジオアルタさんとの繋がりが増え、ビジョンを通じて「オール新宿」で地域を盛り上げよう、といった気運が高まっているように感じます。
これから歌舞伎町に完成する東急・東急レクさんの複合施設にもビジョンが設置されると聞いているので、駅前から歌舞伎町まで連動して、面白いことを仕掛けていければと思います。

放映時間:07:0025:00 23時以降無音放送(緊急事態宣言中は20時まで)
現在は密にならないよう1時間に25回放映するほか、放映時間の告知も行っている。

*インタビューは20218月に行ったものです。

関連URL

クロス新宿ビジョン
https://vision.xspace.tokyo/

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