新宿にある老舗ロシア料理屋『スンガリー』
オーナーはあの有名女性歌手

2018.04.20

2017年に60周年を迎えた、歌舞伎町の老舗ロシア料理屋「スンガリー(新宿区歌舞伎町2-45-6 千代田ビルB1)」。歌舞伎町に店舗を移転したのは1960年。それからずっと歌舞伎町界隈で営業し、現在は新宿に2軒の店舗を構えている。

本格的なロシア料理を堪能でき、文化人・著名人が訪れて知的な会話を交わし、ロシア人客も多く訪れる店として長い間親しまれてきた。そんな名店スンガリーは「百万本のバラ」などを歌った、歌手の加藤登紀子さんがオーナーを務める店である。

スンガリーの歴史は、オーナー加藤登紀子さんのご両親が1935年、日本から旧満州ハルビンへと移住したことから始まったといえよう。1943年に加藤登紀子さんはハルビンで生まれる。当時のハルビンはロシア人が多く住み、加藤家もロシア人の住居に間借りしていた時期もあったほどハルビンに住む日本人とロシア人の仲は親密で、治安も良く、インフラも整った人気の街だった。加藤登紀子さんのお父さんである加藤幸四郎氏はハルビンのことをこのように語っていたという。

ご両親は、1946年に日本に帰国した後もロシアに対する郷愁の想いや、満州から日本に引き揚げてきたロシア人たちに安定した職場を提供したいという目的もあり、1957年東京新橋にロシア料理店「スンガリー」をオープンする。店名はハルビンを流れる川の名である「スンガリー(松花江)」から名付けた。以後ロシア人スタッフとともに、日本で本格的なロシア料理を提供する老舗店舗としての歴史をスタートする。

1958年に京橋、そして1960年に新宿歌舞伎町に移転、1967年には新宿西口店をオープン。1972年には京都にキエフ京都店がオープンしている。1973年には、現在の新宿(東京都新宿区歌舞伎町2丁目45-6 千代田ビルB1)に移転、歌舞伎町店は本店として運営されている。2004年には、ラニョーク店(東京都江東区青海1丁目3-15 ヴィーナスフォート 3F)がオープン、2016年には本店よりカジュアルな業態としてスンガリー新宿三丁目店(東京都新宿区新宿3-21-6新宿龍生堂ビル B1)がオープンした。ロシア料理を提供するレストラン店舗としてのスンガリーは、信頼とともに歴史を重ねている誇り高き名店である。

ロシア料理と言われて真っ先に思い浮かぶ料理と言えば「ボルシチ」ではないだろうか。

スンガリーのボルシチは開店当初に在籍したロシア人女性クセーニヤさんのレシピが元となり、牛がベースのブイヨンを作り、ニンジン、じゃがいも、トマト、キャベツ、煮込まれて柔らかくなった牛肉などが入る。千切りのビーツ(赤カブ)を使用することによりスープに甘さが増しスープの色も真っ赤に染まる。

最後に生クリームとヨーグルトで作ったサワークリーム「スメターナ」がスープ中央を飾る。スメターナは濃厚でありながら生クリームよりさっぱりとした味わいがあり、ロシア料理には欠かせない食材の一つ。スープによく溶かしてから頂くと、コクが増しながらクドさを感じさせず、するするとお腹におさまってしまうボルシチの完成となる。

前菜の「マリノーブナヤ・ケタのブリヌイ包み(ロシア式フレッシュサーモンマリネのブリヌイ包み)」も評判が高く、薄く焼いたロシアのパンケーキ「ブリヌイ」、スモークしていないフレッシュサーモンに選りすぐりの塩をかけ、辛みを抜いたオニオン、トマト、アグレツ(ロシアのキュウリのピクルス)、イクラをのせ、最後にやはりスメターナが味を整えている。

加藤登紀子さんが好きなメニューは「シャシリーク」(香味野菜とハーブに漬け込んだ、柔らかい仔羊肉の強火串焼き)と、「サリャンカ・ミヤースナヤ」(塩漬けにした肉、野菜のトマトスープ)だそうで、サリャンカ・ミヤースナヤは「こんなトマトスープは飲んだことがない」と思わせるようなロシアの味が特徴的な一皿となっている。

そしてロシアのお酒と言えば、なんといってもウォッカである。スンガリーでは、ウォッカを冷凍庫でマイナス15度まで冷やしたものを提供する。マイナス15度のウォッカは氷と液体の狭間で留まり、トロトロの口当たりとなる。ウォッカの種類は豊富で、クリアータイプからフレーバータイプ、ハーブや果物を漬け込んだ自家製ウォッカ(ナストイカ)なども用意されており、常時50種類のウォッカが楽しめるように構成されている。

ウォッカ以外には、ワイン発祥の地である「グルジアワイン(ジョージアワイン)」も多く取り揃えている。半伝統製法で作られたグルジアワインは、程よい雑味やスパイス感を持ち、個性が強いものが多く、スンガリーの料理との相性が良い。

ロシアを代表するバルティカビール、カクテル、ジャムが入った紅茶のロシアンティーなどもあり、スンガリーのロシア料理に花を添えてくれる。

スンガリーを運営している株式会社インターダイングループ(設立1965127日)現代表取締役の隅洋一さんは、新宿歌舞伎町について「スンガリーが京橋から移転オープンした当時は、新宿コマ劇場もなく、早稲田の学生さんたちが多くいらっしゃる、また地元の商店も普通にある、落ち着いた街だったと聞いております。今はだいぶ違う様子ですね。

スンガリーにいらっしゃるお客様からは『歌舞伎町にこんなお店があったんですね』といった声、またお連れ様が『こんな良いお店、よく知っていたね』とお話されている声を伺います。手前どものお店を気に入っていただくことは大変嬉しいのですが、皆様がおっしゃるところの”ちょっと気の利いた店”がある印象が少ないのかもしれません。新宿には良いお店や、皆様がお楽しみになれる素材が沢山ございますが、街自体がそれを活かしきれていないように感じています。楽しい外食は、そこに向かう道中も楽しいほど、盛り上がるものです。

今は外国人の方も多いので、趣きやカッコよさが演出されて街の魅力が皆様のお目に触れるようになり、道中を楽しめるようなワクワク感のある風景ができてくると、もっと面白い街になるのではないでしょうか。この場所で長年お店をさせていただいておりますが、新宿が持つ様々な魅力を感じられる良い街になってほしいと願っています」と話し、その未来に期待を寄せている。

これまで、スンガリーは伝統的な南ロシアのメニューが多かったが、今後、北欧やヨーロッパ寄りのロシア料理メニューを増やしていくことを検討している。今のロシア料理の流行を伝えたり、国土が広いゆえのバラエティー豊かなロシア料理を楽しんでもらえるよう、スンガリーは新たなメニュー構成に挑戦していきたいのだという。

ロシア料理の老舗として、トラディショナルなもののみならず、現代のロシア、広いロシアを紹介してくれる名店として、これからも歴史を重ねていくのだろう。ロシアを知るにはスンガリー。ますますいろいろ教えてくれそうである。

〇新宿東口本店
月〜金 17:00 – 23:30 (22:30 ラストオーダー)
土 16:00 – 23:30 (22:30 ラストオーダー)
日・祝 16:00 – 22:30 (22:00 ラストオーダー)
定休日年中無休(年末年始、ビル設備点検日を除く)

〇新宿三丁目店
月〜金
ランチ 11:30 – 15:00 (14:30 ラストオーダー)
ディナー 17:00 – 23:00 (22:00 ラストオーダー)
土・日・祝
ランチ 11:30 – 15:30 (14:30 ラストオーダー)
ディナー 17:00 – 22:30 (22:00 ラストオーダー)
定休日年中無休(年末年始、ビル設備点検日を除く)
新宿区新宿3-21-6新宿龍生堂ビル B1

 関連リンク 
「ロシア料理 スンガリー」 http://www.sungari.jp/

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歌舞伎町文化新聞編集部の略称アイコンです。

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