一般社団法人化し、より幅広い活動へ
歌舞伎町のまちづくりに取り組む「歌舞伎町タウン・マネージメント」

2023.02.10

歌舞伎町ではまちづくりにおけるさまざまな課題に取り組もうと、地元の商店街振興組合や町会、民間企業、ボランティア団体、そして区をはじめとする行政、警察や消防などが連携する「歌舞伎町タウン・マネージメント」という団体が設立され活動している。
街の魅力発信や来街のきっかけづくりなどを軸に活動を展開する同団体を管轄する新宿区文化観光産業部文化観光課長の村上喜孝さんに、設立のきっかけから今後の展望までお話を伺った。

歌舞伎町タウン・マネージメント(以下TMO)はどういう経緯で設立されたのでしょうか?

区は、2005(平成17)年に、官民連携で「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」を設立し、環境浄化・美化、地域活性、まちづくりなどを軸に「歌舞伎町ルネッサンス」の取組みを推進してきました。その動きの中で、歌舞伎町シネシティ広場(以下、シネシティ広場)などの活用を含め、「歌舞伎町ルネッサンス」が目指すまちづくりを実現し、さまざまな方が参画する場やネットワークを構築するため、2008(平成20)年に任意団体として設立されたのがTMOです。

どのような活動をされていらっしゃいますか?

TMOの活動の一つは、ホームページやブログで歌舞伎町のイベントやお店の情報、活動についてなど情報発信を行っています。また安全な街、安心して過ごせるようなまちづくりに向け、区や地元と共に道路のゴミ拾い、シネシティ広場の一斉路上清掃活動を行うほか、歌舞伎町商店街振興組合が取り組む客引き防止パトロールにも協力しています。

そして、TMOの活動の大きな柱となっているのは、シネシティ広場や区立大久保公園といった公共空間の活用で、貸出しを始め、新たな文化の創造や発信と賑わいづくりに向け、さまざまな業務を行っています。コロナ禍にあって、しばらくイベントによる集客が難しい時期が続き、イベントが一つもできない年もありましたが、安全対策を取るなど徐々に再開しています。昨年は5月に、映画『シン・ウルトラマン』のレッドカーペットイベントがゴジラロードとシネシティ広場を活用して行われました。久しぶりのレッドカーペットでもあり、監督はじめ出演する俳優の方々も登壇したので、フェンスで囲って観客も抽選という形でしたが、とても大きな反響がありました。12月にはキッチンカーを入れたオープンカフェイベントを展開しましたが、これは一社TMO自らが主催者となる初めての試みとなりました。

映画『シン・ウルトラマン』のレッドカーペットイベント 写真提供:新宿区

大久保公園では昨年7月、公園内のバスケットコートとフットサルコートのあるスポーツエリアを改修し、「Kevin Durant Renovation Art Court 2022」としてアートコートを整備しました。これは北米NBAの史上最高選手のひとりと称えられているケビン・デュラント選手が設立したチャリティー基金と、2K基金の支援によって整備されたもので、実際に整備を進める際は、一般社団法人go parkeyのサポートを受けて、国内外で活躍するアーティストのFATEさんがデザインしたアートを描きました。完成時は区内の学校の生徒さんたちを招待して、完成記念イベントを行ったり、セミプロチームによるバスケットボールイベントを開催しました。今後は青少年向けのイベントなど地域交流も活発に進めていけたらと考えています。このように新しい方々とのつながりができたことは非常に良かったですし、明るい雰囲気づくりにもつながったと思います。

大久保公園アートコート完成記念式典の様子 写真提供:新宿区
上空から見た大久保公園のアートコート 写真提供:新宿区

その後11月に初開催した「やきいもフェスTOKYO」は大変な人気で、連日テレビなど情報番組にも取り上げられたことにより、公園内からの行列が外を取り囲むほど続き、これまでのイベントをはるかに凌ぐ来場者数となりました。特に若い女性が多く、皆さんがSNSなどで発信されることで、歌舞伎町の、こちらも明るいニュースが伝わりうれしく感じました。

シネシティ広場は、4月に開業する「東急歌舞伎町タワー」に屋外ビジョン、屋外ステージができることで注目度も高まり、一体活用することでさらに可能性が広がりそうですね。

事業者である東急さんは、広場と歌舞伎町タワー前面の屋外ビジョン、広場に階段を通じて降りることができる屋外ステージを一体的に使い、レッドカーペットイベントができるようにしたいと当初からお話されていました。今年度中は建物前の道路の占有に関する課題を警察などと話し合ってきましたが、基本的にイベントなどでの広場との一体活用が可能になりました。
屋外ビジョンは通常の屋外広告物として認められるサイズより大きいのですが、エリアマネジメントの活動の中で有効に活用していくということで特例許可により設置が実現したものです。放映する広告物の内容はTMO内に屋外広告物の自主審査会を設置して審査を行うなど、広場と連動して総合的に取り組んでいく予定です。歌舞伎町は屋外ビジョンの前に広場が広がるという好条件ですので、上手に活用していければ街の発展にもつながると思っています。西武新宿線を利用する方々は、広場を通って街に出入りされる方も多いので、「東急歌舞伎町タワー」開業後はまた人の流れにも変化があると期待しています。

4月に開業を迎える「東急歌舞伎町タワー」

TMOは一般社団法人化され、昨年10月から事業をスタートされたと伺いました。

TMOの一社化は以前から課題に上がっていたことでした。TMOが日常的に行っている活動はこれまではシネシティ広場や大久保公園の活用がメインでしたが、今後活動範囲を広げたり、さまざまなところへお声がけしてイベントなどを誘致したり、イベントの直接実施等、タウンマネジメント活動の幅が広がればと、TMOの会員である地元の皆様にお声がけし、一社化を実現しました。
法人化することで信用度も高まりますし、東急さんが提供する屋外ビジョン、屋外ステージと広場の一体活用も含め、多方面とつながり合いながら円滑に活動していければと考えています。

海外からの観光客も少しずつ回復傾向にあるようですが、TMOの今後の活動の展望をお聞かせください。

宿泊場所は新宿のホテルで、そこを拠点として、浅草や他の観光地へ観光に出かけているという状況もあると以前聞いたことがあります。
歌舞伎町を含め新宿区全体を考えた時、区内の魅力的な観光地へ足を運んでもらいたいということは課題として考えています。
歌舞伎町で観光をしたいという旅行者も国内外問わずたくさんいると思いますし、歌舞伎町以外のさまざまな区内の観光スポットを紹介することによって、新宿を訪れる人々にどのように新宿区の中で回遊してもらえるようにするか。
コト消費といわれて久しいですが、飲食だけでなく、地場産業である染色体験など、区内で楽しめるアクティビティをサイトでリスト化して紹介するなど、アイディアを話し合っているところです。

歌舞伎町では、コロナ禍により、減ってしまった賑わいを取り戻すために、「東急歌舞伎町タワー」開業を契機に、まちを盛り上げていこうという気運が高まっています。TMOの活動を強化することによって、シネシティ広場で魅力的なイベントが行われれば、それを見るために観光客も集まって来ると思います。例えば、2018年にシネシティ広場を囲む事業者が協力して行ったイベント「たてもののおしばい 歌舞伎町の聖夜」2019年に開催した「歌舞伎町X’masスケートリンク」のように、歌舞伎町全体で、皆さんが同じ目的をもって一緒に活動していくような企画がどんどん生まれていくと、訪れたい魅力にあふれた楽しいまちづくりにつながっていくのではないかと思っており、それを仲立ちするTMOの活動に期待しております。

関連URL

歌舞伎町タウン・マネージメント
https://www.d-kabukicho.com/

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