「花園万頭CAFE&SHOP」「花園万頭テイクアウト店」
185年の味を守りつつ、新たな空間から始まる
老舗和菓子屋の挑戦

2019.08.26

毎年60万人もの人が訪れる酉の市や名物の見世物小屋でも有名な新宿の「花園神社」。神社の名前にちなみ、90年近くにわたってこの神社の近くで和菓子の商いを行ってきたのが「花園万頭」である。もともとは1834(天保5)年、銘菓の本場として名高い加賀前田家の城下である石川県金沢に創業した「石川屋本舗」で、1906(明治39)年、東京(青山)に進出というから、実に創業から185年の歴史を誇る。

「花園万頭CAFE&SHOP」の外観

そんな「花園万頭」がカフェを併設した物販店舗と、初となるあんぱんなどを扱うテイクアウト店を出店した。2018(平成30)年12月にオープンした「花園万頭CAFE&SHOP」は、まさに「花園神社」の通りを挟んで目の前という立地。店内に入ると、菓子折りをイメージした壁面ディスプレイ、ランダムの格子をあしらったモダンなショーケースやカフェなど、明るく現代的な空間が広がる。

「花園万頭CAFE&SHOP」の内観

実は旧「花園万頭」は同年7月に、「銀座千疋屋」のバックアップによって新会社(株式会社パティスリー銀座千疋屋の子会社で、株式会社花園万頭)を設立し、その商標や事業が継承されたのである。それまで現店舗の裏に構えていた本店も、偶然空いたという現在の場所に移転、店舗デザインなどを一新しグランドオープンした。社長の花里正之さんは「『花園万頭』は長い歴史を持つ老舗で、扱っているものも高級なイメージがあり、一般の若い方やインバウンドの方には少し敷居が高いと感じられていたかもしれません。以前はカフェも2階のため、入りづらさもありました。そこで、和は和として基本に据えつつも『和モダン』をテーマに、誰でも気軽にご来店いただけるような明るい店舗を目指しました」と振り返る。

「花園万頭CAFE&SHOP」の内観

新たな店舗では代表銘菓だけでなく、「銀座千疋屋」と共に互いの強みを活かして作った新たな商品も並ぶ。その一つが「フルーツ大福」で、「銀座千疋屋」が厳選したフルーツを丸ごと「花園万頭」の大福で包み込んだ。「夏場はお休みしていますが、餡の甘さとフルーツの甘酸っぱさや水々しさが相まって、オープンの際もとても好評でした。イチゴやみかん、キウイ、パイナップルなどその季節に合わせた果実で、涼しくなったらまた提供する予定です」と花里さん。

「フルーツ大福」 北海道大手亡豆から作った白餡と上質な餅粉を使った大福でフルーツを包み込む

ほかに初の「花園ソフトクリーム」も始め、特製こし餡や栗の甘露煮、同店の代表銘菓「ぬれ甘なつと」をトッピングした商品を用意する。

カフェで提供するメニューより

グランドオープンから半年経過した新たな店の様子について伺うと花里さんは「花園神社の目の前でこれまでよりも目立ちますし、古くからの常連客の方だけでなく、神社に参拝に来られた方や、新しいお客さまも増えています」と話す。

「花園万頭テイクアウト店」外観

新生「花園万頭」がもう一つ、2019(令和元)年6月にオープンしたのが「花園万頭テイクアウト店」である。こちらも本店同様シンプルで和モダンな店内で、「ワンハンド」をコンセプトに新商品の「花園あんぱん」(こしあん、つぶあん2種)や、蒸し立ての「花園万頭」、カフェでも好評の「花園ソフトクリーム」を提供する。

「花園万頭テイクアウト店」内観

「偶然、すぐ向かいの店舗が空いたのです。そこでもっと和菓子を手軽に、身近に感じてもらえたらと初となるテイクアウト専門の店を立ち上げました。高級食パンのブームもありますけれど、もともと和菓子屋なので当店の餡とパンを融合させて、当店でしか作れないあんぱんを作ったら面白いのではと思いました」と花里さん。

「花園あんぱん」はこしあん、つぶあん各1個300円

「こちらの店は、土地柄、より観光客などインバウンドの方などがふらっと立ち寄られます。純粋な和菓子というよりもあんぱんになると、より抵抗なく買っていかれたり、ソフトクリームを食べたりされています。山芋を使った花園万頭の皮は薄めで非常に滑らか、餡もあっさりとしながら芳醇で、蒸し立てはふんわりとまた違った味わいです。こしあんの方のあんぱんは花園万頭と同じ餡を使っているので、双方違った味わいも楽しんでいただけるのでは」と花里さん。

「花園万頭」 1個350円

「一番残し続けていきたいものは、やはり『代表銘菓の味』です。これが変わってしまっては『花園万頭』ではないのかな、と思います。原材料にもこだわりますけど、原材料が同じだからといって誰でも同じものが作れるかというとそうではありませんし、職人さんの手作業で作っていますから、その技術は代々受け継いでいかなければと考えています。

「宇治抹茶スペシャル」は宇治抹茶ソフトクリームにぬれ甘なつと、栗の甘露煮をトッピング。

一番の良さである『花園万頭』の伝統の味を守りつつ、果物と和と融合させた新商品などそれ以外の商品も開発しながら、よりこの新宿の街からお客さまの層を広げていければと思います。はやりすたりはあるんでしょうけれど、美味しいものは基本的に美味しいですよね。シンプルにそんな『美味しさ』を追求していきたいと思います」と花里さんは期待を込める。

「花園万頭CAFE&SHOP
東京都新宿区新宿5-16-11 営業時間10時〜19

「花園万頭テイクアウト店」
東京都新宿区新宿5-17-2 営業時間11時〜19

 関連リンク 
東京新宿花園饅頭 https://www.tokyo-hanaman.co.jp

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