世界にも知られる東京・新宿の町名「歌舞伎町」。おのずと知れた日本有数の歓楽街であるが、エリアとしては、南の靖国通りから北は職安通りまで（一部除く）、東西はJRの線路と明治通りに挟まれた数百メートル四方で、歌舞伎町一丁目と歌舞伎町二丁目から成り立つ。今回は、そんな歌舞伎町の街の安全を日々守る「警視庁新宿警察署 歌舞伎町交番」（以下、歌舞伎町交番）について紹介したい。
「歌舞伎町交番」が立つのは、歌舞伎町一丁目と同二丁目の境でもある、通称「花道通り」と呼ばれる通り沿い。「歌舞伎町シネシティ広場」からほど近く、北側には「大久保病院」が立つ。『歌舞伎町の60年 歌舞伎町商店街振興組合の歩み』（平成21年、歌舞伎町商店街振興組合編集・発行）によれば戦後復興期の1948（昭和23）年、当時同エリアの町会長だった鈴木喜兵衛によるまちづくり計画が進み、繁華街としての「歌舞伎町」の街ができつつあったことを記念して「新宿歌舞伎町復興祭」が開催されたという。
その際、復興祭を手掛けた喜兵衛を中心とする「新宿歌舞伎町復興会」が警視庁に寄付したものが新設の派出所と公衆トイレだった。すでに歌舞伎町一帯は上下水道、電気、ガス、電話、街路樹などが整備されていたが、喜兵衛はまちづくりにおいて「治安」と「衛生面」が重要事項だと考えていたのである。
『とりわけ、不特定多数の人が訪れる日本一の歓楽街を目指す歌舞伎町においては、安全安心なまちづくりの拠点となる派出所の役割はより重要である』
『常駐する警察官の配置を淀橋警察署（現・新宿警察署）に申し出たうえで警察庁に派出所の寄付手続きを行い』（以上『歌舞伎町の60年 歌舞伎町商店街振興組合の歩み』から引用）前述の復興祭で授与式が行われたのである。
日々の業務、交番から見る歌舞伎町の街の風景について「歌舞伎町交番」を管轄している「新宿警察署」に伺いました。
地上4階・地下1階の大型交番ですが、現在までの経緯をお聞かせください。
「歌舞伎町交番」は1948（昭和23）年2月28日、新宿区角筈1丁目879番地（現在の歌舞伎町1丁目19番3号）に「新宿歌舞伎町巡査派出所」として開設されました。1964（昭和39）年10月3日、同所に「歌舞伎町商店街振興組合」がビルを設立し、その1、2階で業務を開始、その後名称などの変更を経て1993（平成5）年4月1日、現在の場所（歌舞伎町2丁目44番2号）において業務を開始し、現在に至っています。
主な交番業務はどのようなものでしょうか。勤務されている方は何人いらっしゃいますか？
交番は街の意見・要望に応えながら、住民の日常生活の安全と平穏を確保する役割を担っています。現在10名以上の警察官が交代制で勤務しながら、事件事故の対応や道案内、落し物の取り扱い、困りごと相談、パトロール、巡回連絡などさまざまな活動を行っています。
巨大ターミナル駅である新宿駅周辺には多数の交番があります。それぞれの交番に担当区はありますが、110番通報などが集中した場合、すべての業務に協力して対応します。新宿駅に隣接する四谷警察署、原宿警察署とは本部の無線指令などにより連携して取り扱うことがあります。
コロナ禍にあってまだまだ来日観光客の姿は見られませんが、以前の街の様子、そして現在の様子はいかがでしょうか。
新型コロナウィルス感染拡大以前は、昼夜問わず通行人が多く賑わっていました。インバウンドからの問い合わせ（道案内）は「サムライミュージアム」「東京都庁」「新宿御苑」などが多かった印象があります。
非常事態宣言が発令された昨年の春以降は通行人が減少し、110番通報や取り扱い件数も減っています。秋以降は徐々に通行人も増えて、110番通報や取り扱い件数もコロナ以前に戻りつつあったところでした。
街の方々との関わりの中で印象的なことはありますか？
歌舞伎町周辺にいらっしゃるボランティアの方々と原則月曜日から土曜日の午後6時〜8時まで、合同パトロールを実施しています。毎回自らの手で安全・安心な歌舞伎町を作ろうとする街の方々の意気込みを肌で感じ、その協力に大変感謝しています。
歌舞伎町は「誰もが安心して楽しめるエンターテイメントシティ 歌舞伎町」を目指し、「環境浄化、美化」「新たな文化の創造・発信と賑わいづくり」「快適で魅力あふれるまちづくり」の3つを柱とした「歌舞伎町ルネッサンス」を推進している。地元商店街振興組合や町会をはじめ、民間企業、区や警察、消防などが手を取り合いながら進めるまちづくり。今後も歌舞伎町のさまざまな姿をご紹介していきたい。
＊取材は2020年12月22日に行ったものです。
