「新宿シアタートップス」開業
本多劇場グループが新たに手掛ける小劇場

2021.12.02

2021年8月、歌舞伎町のほど近くにあるビル「WaMall トップスハウス」の4階に劇場「新宿シアタートップス」が開業した。運営を手掛けるのは下北沢で「本多劇場」「ザ・スズナリ」など8軒の劇場を経営し、長年にわたり演劇文化を牽引する本多劇場グループだ。

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「シアタートップス」という劇場名は演劇ファンには懐かしく響くかもしれない。というのも元々、1985(昭和60)年に同ビルが建てられた際に併設されたのが「シアタートップス」だった。1階から3階には喫茶店があり、店内から階段でも4階の劇場に上がれたという。150席ほどの小さな空間ながら、やがて演劇界の登竜門的な存在ともなり、20年以上にわたって新宿地域を代表する小劇場として親しまれた。三谷幸喜率いる「東京サンシャインボーイズ」、松尾スズキ、宮藤官九郎らが名を連ねる「大人計画」、大阪で旗揚げされた「劇団☆新感線」など、現在第一線で活躍する演劇人たちもこの劇場で数々の公演を行ってきた。
同劇場は2009(平成21)年に閉館。翌2010(平成22)年、ビルのリニューアルオープンに伴い、同フロアも松竹芸能株式会社が運営する「新宿角座」に生まれ変わり、今年3月までお笑いやライブ公演などを行っていた。

「新宿シアタートップス」内観「新宿シアタートップス」内観

さて、今回12年ぶりにその名前が復活した「新宿シアタートップス」。本多劇場グループで総支配人を務める本多愼一郎さんは、「いろいろな方とのご縁から現ビルオーナーであるテンワス株式会社さんとお話する機会をいただきました。テンワスさんもこの地域に続く演劇文化を守りたいという思いから、ビルに劇場が存続することを強く望まれていました。小さな規模ですが劇場という場を再開し、お客さまが足を運んでくれることで少しでも地域の方とつながれば、そして演劇を通じて今後、何か街に向けてできることがあればと考え、新宿で劇場を手掛けることにしました」と話す。

「コロナ禍にあって劇場の運営自体も厳しいですが、演劇業界もそれぞれがこの状況に合わせて最善を尽くしています。代表(父・本多一夫氏)と二人で話をしましたが、『劇場を、というお話があったのだからこれは今やらなければ。やるしかない』と会議するまでもなく短い会話で決定しました」と本多さんは微笑みながら振り返る。

本多愼一郎さん 撮影:弦巻勝本多愼一郎さん
撮影:弦巻勝

「シアタートップスが復活した」「再び開けていただいてありがとうございます」と、かつての劇場を知る人から喜びの声も届いているというが、どのような思いから劇場名を引き継がれたのだろうか。
「僕自身、『シアタートップス』はすごくいい作品がかかっているというイメージが強くありました。『ザ・スズナリかシアタートップスか』と言ってくださる声もあったと伝え聞いていますが、昔の公演のラインナップを見ても今大活躍されているような方が非常に多く出ていた劇場でした。僕の中では新しく手掛ける劇場だと思っていますが、この空間は今までのさまざまな歴史をすべて刻んできています。これまでの劇場に思いを寄せるそうしたみなさんの思いや歴史はつながっていて良いのではないかと思いました。以前のオーナーさんから使用の許可もいただきましたので、名前を引き継ぎ開業しました」と本多さん。

客席の様子客席の様子

演芸が興行のメインであった「新宿角座」からは大部分を改修したという。「当時の『シアタートップス』を知っている方が来られたら、そんなに変わっていないと思うかもしれません(笑)。この限られた空間を、それぞれの劇団が公演に合わせていろいろ工夫したり自由に使ったりできるよう整えました。それでも僕としては8割くらいの完成度。ここを使ってくださる団体さん、キャストさんやスタッフさんなどここが仕事場の方々、そしてここにお呼びする観客の方々、僕たち劇場にとってはすべてお客さまです。みなさんに舞台を使ってもらい、お話をいただいく中でどんどん手直しし、より良い空間に進化させていけたらと思っています」

11月3日〜14日に公演した はえぎわ「ベンバー・ノー その意味は?」 舞台写真:梅澤美幸11月3日〜14日に公演した はえぎわ「ベンバー・ノー その意味は?」 舞台写真:梅澤美幸
舞台写真:梅澤美幸舞台写真:梅澤美幸
舞台写真:梅澤美幸舞台写真:梅澤美幸

新宿には同劇場のすぐ近くにある「紀伊國屋ホール」など劇場が多くあるという。「かつては少し大きい劇場もありましたし、『シアタートップス』をはじめ私も新宿にはよく芝居を見に通っていました。“劇場がある街”というのは全国的に見てもそれほど多くないと思うんです。例えば公共施設としてのホールなどは各市区町村にありますが、僕たちが手掛ける演劇文化と直接すごくつながっているかというと、また少し違っているように感じます。下北沢と新宿では街の規模は違いますが、どちらも演劇に特化した小劇場のある“演劇の街なのだと思います」

壁に貼られたオープニングシリーズのさまざまなチラシ壁に貼られたオープニングシリーズのさまざまなチラシ

「舞台の配信などが増えたことは、より多くの方が気軽に演劇を見たり知ったりできる良い機会になっています。それでも劇場に行って『生で見る』というのはかなり違った体感があるし、僕は劇場に行くまでの行動もすべて楽しみだと思っています。みなさんそれぞれに何か思いがあって芝居を見に来られると思うので、今日どんな公演をやるのかと想像したり、観劇後に近くの飲食店で舞台の感想を話しあったり、そうしたすべてを楽しんでいただけたらと思っています。
新宿は昨年から続くコロナ禍でもどこか賑わいの空気感があって、街に人がいなかった時でも、不思議と人が集まってくる街の力のようなものが感じられました。この劇場は、通りに出て駅に向かう間も華やかな雰囲気で、お芝居を見た余韻をそのまま持って帰れるというところも新宿という街ならではの魅力かもしれません。
かつての『シアタートップス』を知らない若い団体にも使っていただきたいですし、若い世代のお客様にも劇場を知ってもらい、演劇に触れるきっかけになればうれしいです。劇場は多くの人が集まる場所です。新宿にあるほかの小劇場とも仲良くしながら、街と繋がり、街に根付いた劇場にしていきたいです」と本多さん。

演劇をまだ見たことがないという方、ぜひ新しくオープンした「新宿シアタートップス」で小劇場デビューしてみては。

関連URL

「新宿シアタートップス」
東京都新宿区新宿3-20-8 WaMall TOPS HOUSE 4階
http://www.honda-geki.com/tops/

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歌舞伎町文化新聞編集部の略称アイコンです。

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