さまざまなエンタメが交差する
ライブホール「Zepp Shinjuku (TOKYO)」と
ナイトエンターテインメント施設「ZEROTOKYO」

2023.03.31

歌舞伎町の地で完成が待たれる「東急歌舞伎町タワー」は、エンターテインメント施設ホテルの超高層複合施設として、4月14日の開業前から独特な存在感が漂う。地上階に展開される劇場や映画館に続き、今回は地下1階から地下4階に誕生するライブホールとナイトエンターテインメント施設を紹介したい。

建物の事業主体である東急株式会社、株式会社東急レクリエーションの2社と株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントによる合弁会社「株式会社TSTエンタテイメント」が運営を手がける同施設。ライブホールとして誕生するのは、東急グループが持つ施設運営ノウハウに、「Zepp」をはじめとするソニー・ミュージックエンタテインメントが得意としてきたコンテンツ開発やライブホール運営の経験を掛け合わせた「Zepp Shinjuku (TOKYO)」だ。都内ではお台場、羽田に継ぐ3館目となるが、ライブが終わってからの夜間の時間帯を活かし、新たに「ZEROTOKYO」というナイトエンターテインメント事業も展開する。これまでのライブホールとは一味もふた味も違った空間について、開発に関わった株式会社TSTエンタテイメント運営事業本部長の萩原要さん、ライブ・ラウンジ運営部長の内田実さんにお話を伺った。

編集部:
今回の施設づくりはどのように進められたのでしょうか?
特にナイトエンタメ施設は新たなチャレンジだったと伺いました。

内田さん:
実は企画を進める最初の段階では、海外の大型ナイトクラブとの連携も考えました。しかし調べてみると、そうした施設の多くが皆で盛り上がってパーティーを楽しむような雰囲気の空間で、この館が目指す方向とは違うと感じました。歌舞伎町にはもともとライブハウスなど音楽カルチャーもナイトエンタメ文化も盛んだった土壌があるので、街が培ってきたその歴史を引き継ぐような、よりカルチャーを感じられるような空間、音楽を楽しみたい人が本当に楽しめるような場所を目指そうと考えました。
既存の施設と連携するのではなく、一から自前で作っていくことを決断しましたが、頼るものがないので大変は大変でした。ラスベガスにはホテルとナイトエンタメが1つの建物内に共存し、宿泊する人がナイトエンタメを楽しんだり、ナイトエンタメに遊びにきた人が宿泊したりするような総合集客型の施設があります。我々の東急歌舞伎町タワーも歌舞伎町という観光地に建つホテルとエンタメ施設の複合ビルになりますので、しっかりと地元の方々と連携しながら街を盛り上げ、お客さまをお迎えしたいという思いで進めてきました。

編集部:
ライブホールとしては新宿エリアで、ナイトエンタメ施設としては国内最大のキャパシティとなります。どのような空間になるのでしょうか。

内田さん:
コンセプトには「ENTERTAINMENT JUNCTION」という言葉を掲げています。音楽、DJ、空間演出、パフォーマンスといったあらゆるエンターテインメントコンテンツが交差し、これまでにない新しい体験ができる場として新宿から世界へ向けて発信していきたいと考えています。国内外から集まる方の多様性を受け止めて、皆さんが安心して安全に楽しんでいただける場所を提供していきたいと思っています。

萩原さん:
Zeppというライブホールの視点にたつと、都内でもこれまで中心部にはなかったので立地の面でも新しいチャレンジでした。風営法の規制が厳しくなる以前はお台場のZeppなどで週末の深夜帯にクラブイベントも行われていましたが、それもできなくなった経緯があり、歌舞伎町にホールをつくるのであれば、これまでできなかったナイトエンタメに挑戦できるのではないかという期待もありました。加えて、東急さんとソニーが手がける施設なので、「クラブミュージックは好きだけどクラブってちょっと怖いイメージが……」と躊躇していたような人たちにも安心して来てもらえるような場所になれば、裾野も広がるのではないかと感じています。

編集部:
最新のライブホール、エンタメ施設としてどのような仕掛けが施されているのでしょうか?

内田さん:
メインホールのある地下4階フロアは「DYNAMISM」がデザインテーマでアクティブな空間に仕上げています。ホール内の壁360度全体にLEDビジョンを設置し、さらには音響と照明と映像を連動させて演出する「メディアサーバー」を導入することで、これまでに無い演出が可能になっています。これは国内の同規模のライブホールはもちろん、ナイトエンタメ施設で常設されているところは世界的にもあまりない試みだと思います。

萩原さん:
スタンディングで約1,500人というキャパシティは既存のZeppホールの中で一番小さい「Zepp Fukuoka」と同規模です。都内でみればZepp羽田の半分の収容人数ですし、地下にあるため搬入面においても若干のハンディキャップもありますが、その分ナイトエンタメ施設としての活用を意識した360LEDビジョンがついていたり、照明に関してはクラブ用のレーザーや通常のライブホールの倍近い数のムービングライトを設置していたりするので、これまでのZeppや他のライブハウスではできないような演出ができるというプラスの要素があります。特に映像やライティングをシンクロさせた演出はアリーナやドームクラスではあるかもしれませんが、このキャパで可能というのは画期的だと思います。

編集部:
音響の面はいかがですか?

内田さん:
地下2階に設置したヴィンテージスピ―カー以外は、すべてアダムソン製です。スペイン・イビザ島で話題のクラブ「USHUAIA CLUB」やオランダ・アムステルダムの「Paradiso」といった華やかで大型な施設が設置しているブランドでもあり、EDM(エレクトロニック・ダンスミュージック)ジャンルでは、世界NO.1DJと言われるMartin GarrixUmmet OzcanArmin Van Buurenといった著名アーティストがツアーなどで好んで使う機材としても知られています。国内のナイトクラブへの設置は今回の施設が初めてとなり、注目してもらえたらと思います。

萩原さん:
既存のZeppJBLのスピーカーを設置していますが、新宿はナイトエンタメ施設の運営もあるので、差別化する意味もあります。実は各Zeppホール収容人数は違いますが、ステージのサイズや機材のスペックは揃えてあって、アーティストの方たちが同じセットで全国を周ることができるようになっています。ホールツアーの場合、ステージサイズが違うとセットを修正したり、照明や映像も大きな調整が必要になりますが、その手間がかからないのです。そういう意味では新宿は他とは違った規格の会場となりますが、上層階のホテルなど他の施設との連携ができますので、Zeppツアーの最後に新宿で公演をしていただき、ここでしか実現できないような演出によるプレミアムなライブができる場所を目指しています。

加えて撮影、配信関連のハードをソニーと共同で開発しているところです。ソニーとソニーミュージックは同じグループながら、これまでエンタメの現場にソニーの開発チームが来て一緒に進めるということはあまりなかったのですが、今回は現場にどんどん入ってもらって進めているので、よりエンタメの現場に寄り添ったシステムになると思います。この春から羽田、横浜、お台場のZeppAIを使った半自動撮影システムを導入予定です。新宿にはさらに進化したバージョンを、秋を目標に設置すべく進めているところです。そうした機材も含め、プレミアム感あるホールになるのではないでしょうか。

編集部:
ナイトエンタメ施設として、その他のフロアの特徴をお聞かせください。

内田さん:
地下3階は「EMOTIONAL」をコンセプトに、地下4階と同様、アクティブな空間に造っています。ライブやDJプレイまで可能なダンスフロア部分には、アーティストの足立喜一郎さんのミラーリングアートを設置しています。ミラーボールの素材で作られているミラーリングの内側にはLEDビジョンが埋め込まれおりアートと映像を音楽と一緒に楽しめるようになっています。ダンスフロアとは別に、吹き抜けになっている地下3階のバルコニー的な空間からは、メインフロアで楽しんでいる様子を上から眺めることもできます。

地下2階は「NOSTALGIA」というデザインコンセプトです。地下4階や地下3階に比べると少しくつろげるようなフロアで、バーラウンジにはアダムソンより柔らかい音質を提供するヴィンテージスピーカーを設置しています。「BOX」という、音楽に没頭できる35㎡くらいの小さな空間も用意しており、ここでは特定の音楽にこだわらず、ヒップホップやテクノなどさまざまなジャンルの音楽が楽しめるような、更には個性的な音楽なども幅広くやっていきたいと思っています。
アートを展示したり、アーティストとコラボイベントができたりするギャラリースペースも用意しています。
バーエリアの壁には淺井裕介さんというアーティストが描いた泥絵のアートを、バーカウンターには多治見焼のタイルをあしらうなどアートを散りばめた内装は、いわゆる「クラブ」としてはめずらしいかもしれませんが、若者だけでなく大人の方まで幅広い世代に楽しんでいただける雰囲気づくりを大事に考えました。エスカレーターの天井やトイレの内装も非常に凝っていて、見どころの一つになっています。

編集部:
歌舞伎町から生まれる新たな音楽文化から目が離せなくなりそうです。

萩原さん:
ナイトエンタメ施設としてもDJがプレイするだけでなくて、バンドを入れるなどこれまでのクラブとはひと味もふた味も違った幅広いエンタメを提供していきたいと思いますし、ショー的な要素も取り入れられたらと考えています。
新宿では南口エリアでストリートミュージシャンがパフォーマンスしているのを見かけますが、この施設内にはテラスやステージをはじめ、安全に演奏できる場所が設けられています。才能ある多様なアーティストを積極的に見出し、発表の場を提供することも我々の使命の一つだと思っています。今まであまりないと思いますが、DJの新人オーディションなどもしていきたいですし、最新の映像設備もあるのでDJVJをセットで育てるようなこともしていきたいです。

現場にいる経験を積んだスタッフも「今までのクラブと違う、もっとマスに出ていけるようなクラブをやりたい。そこで活躍できる新しいアーティストを育てていきたい」と話しています。エンタメの仕事をしていて、良いライブや良い作品に出会った時ももちろん感動しますが、売れていない時から自分たちが応援してきたアーティストが武道館でライブ出来るようになったり、作品が何億回と再生されたりなどメジャーで活躍するようになった時にやはりこの上ない喜びを感じます。歌舞伎町のこの新たなべニューを僕らのチームで新しいアーティスト、音楽をどんどん生み出していけるような、ライブホール、ナイトエンタメ施設にしていければと思います。

Editorial department / 本文中の本アイコンは、
歌舞伎町文化新聞編集部の略称アイコンです。

PAGE TOP
GO HOME